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第41回在日朝鮮学生美術展 総評

2012年10月04日 14:43 イベント案内 文化 民族教育

上手さを超える等身大の表現力

今年で41回目を迎える在日朝鮮学生美術展(以下、学美)には、在日朝鮮人を取り巻く日本社会の複雑な環境と少子化などで生徒数が減少する中、なんと昨年より約千点多い1万2,796点が日本各地のウリハッキョ(朝鮮学校)から寄せられた。

学美は毎年、ウリハッキョに通う生徒たちの心の成長を表す素朴で力強い作品群で埋め尽くされてきたが、特に今年は震災を乗り越えたくましく学ぶ東北初中や福島初中の生徒たちの明るく元気な作品を観て励まされた。

学美の大きな特徴として、主題と表現手段が多彩で評価基準が独特であるという点をあげられる。

学美の作品には、各学校の美術教師の独自の研究と、生徒一人ひとりを表現者として扱い、作者に寄り添って力を引き出そうとする教師の姿勢が込められている。そうして子どもたちが創りだす出す多彩な作品世界は観る者を圧倒する。

描画技法や技術に重点が置かれる静物画や風景画に代表される一般的な写生画が極端に少ないのも学美の特徴だ。高学年であっても、生活の中で感じた自分なりの考えや思いを表現しようとするウリハッキョ生徒たちの作品に対するこだわりと表現力について、教育関係者から驚きと共感の声が寄せられている。

彩色においても、高学年になるにつれ混色による褐色系の色合いが多い他の美術教育現場や美術展に比べ、澄んだ色彩を好むのは、ストレートな感性の表現として作品の質をより高めている。

もう一つの特徴が色々な表現メディア(媒体、手段)にある。

絵画、立体(工作など)はもちろん、初級部からも出品されるようになったアニメーションや写真、動画などデジタル表現も今年は特に多かった。

今回の特徴として初級部高学年と中級部の授業作品にいわゆる「いい絵」が多く、立体、アニメーションなど表現手段も多彩で上手さを超えた表現が光っていた。この上手さを超える等身大の表現力こそが、われわれ学美の最大の特徴であり、唯一の評価基準となっている。

学美の特徴として授業作品だけではなく、クラブ作品も一緒に展示され、初1から高3までの授業作品と、クラブ生の作品までを一同に見渡せるという利点がある。中級部および高級部クラブ作品の表現世界と表現力はもう一つの学美の顔だ。

年々強くなる中級部クラブでは今年、東京中高、東京第一初中の独特な作品世界が注目を集め、二校そろって「最優秀クラブ賞」を受賞した。

高級部では伝統ある東京朝高、神戸朝高から特別金賞受賞者が出て充実した力の強さを見せたが、今年は特に大阪朝高、神奈川朝高にそれぞれ秀作が多く、これからの四強時代が高級部の美術をより高い次元へと押し上げてくれることに期待している。

今回の学美中央審査会場には、昨年に引き続き一週間審査にフル参加された国立大学の先生や小学校のベテラン教員、南の雑誌(「民族21」)の取材、マスコミ関係、日本人美術関係者などいろんなゲストが訪ねてきた。

民族教育が育んだ奇跡として、子どもたちのピュアな心が表現された作品を通し、世界の国々と人々に民族教育の存在をアピールしようとする学美がますます注目されてきているようだ。

(朴一南、在日朝鮮学生美術展中央審査委員長)

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