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〈在日朝鮮人関係資料室開設〉研究者、学者たちの歓迎の声

2012年07月10日 11:52 文化

「資料室」開設を喜ぶ

7日に行われた朝鮮大学校朝鮮問題研究センター附属在日朝鮮人関係資料室開設記念シンポジウム「在日朝鮮人関係資料収集保存の現況と課題」とレセプションには、朝鮮史研究や在日朝鮮人史研究に長期にわたって献身してきた著名な学者たちが一堂に会した。一様に「資料室」が開設されたことを喜ぶ感想を寄せた。

シンポジウム後行われたレセプション

①誠実な歩みこそ

山田昭次・立教大学名誉教授は、朝大と自身の触れ合いの原点について、次のように振り返った。

67年の初めに、 立教大学の2人の経済学部教授から、朝鮮大学校図書館長で朝鮮近代史研究者である金鐘鳴先生に引き合わされた。金先生は朝鮮人学校の統制のための外国人学校法制定の動きの阻止に協力を求めて来られた。しかし、その教授らは、私に「立教には立教の事情があるのだから、そんなに焦らなくていいよ」と言った。当時新米の教員だった私は、偉い先生たちの同意を得ないでは動けないと思い込んでいた。そこである日、金先生は遂に痺れを切らして「私はあなた方が動いてくれるまでは何度でも来ますよ」と言われた。私は先生のこの短い言葉にさまざま想いが込められているように感じた。この私の直感は間違っていなかった。後日、ご病気の先生のお見舞いにお宅に参上した際に、先生は戦争中に転向し、その負い目意識から一時たりとも逃れ得なかった苦しみや、大阪で部落民から差別された苦渋などを話してくださった。あの先生の言葉にはこの想いが込められていたのであろう。ともかく私は先生の言葉に深い衝撃を受けて、先輩の偉い先生たちが動いてくれなくとも、勝手に動き出す朝鮮問題運動家になった。先生からいただいた葉書(72年2月2日付)には「結局朝・日問題は双方間の誠実性のこもった行動を拡大し、蓄積していく方法以外にありえないと思います」と書かれていた。この文面にも現われている金先生の誠実な人柄は私の心に深く刻みつけられ、それが私を朝鮮問題への本格的な歩みに導いた。

また、荒井信一・茨城大学名誉教授は、日本の戦争責任資料センター共同代表を20年にわたって務めたと述べながら、日本の戦争責任問題を突き詰めると日本の植民地支配責任と重なっていくと指摘した。そして、同氏は朝鮮半島から流入した大量の文化財は今どこにあるのか、流入した経緯がいまだに分からない。明らかにするには、当時、朝鮮半島に大勢の日本人が出かけていたが、その現場にいた日本人がどう認識して、どう行動したかを調べなければならない。私は来年米寿を迎えるが、若い研究者たちがそのような視点を持ち、研究をしてもらいたいと語った。

②解放前の資料の発掘も

京都大学の水野直樹教授は次のように語った。

私は植民地期の日本の政治、社会について研究している。朝鮮人に対する弾圧は、解放後に始まったわけではない。当然、解放前から始まっていたし、日本の植民地支配が最大の原因である。当資料室の開設は喜ばしいが、解放前の在日朝鮮人関係の資料を今後も力を入れて発掘してもらいたい。また、戦後、朝聯が強制解散され、財産が没収されていった。その不当性を訴えた裁判、公安事件の関連資料の収集も必要だと思う。 布施辰治弁護士が関わった裁判の記録は、日本の司法や警察当局に眠ったままのものもあると思われる。また、戦前、捕まった独立運動家や共産主義運動家に対する判決文が各地の検察庁に残っているはずである。 私も京都の市民運動グループに協力して、日本留学中に治安維持法違反で逮捕され、獄死した詩人尹東柱と従弟の宋夢奎の裁判の判決文を京都地検に請求したところ、閲覧、複写が認められた。これからも個人の力でできない資料の収集、公開などに努めてほしい。当資料室がその一つの中心になっていってもらいたい。

③「在日の足跡残すべき」

東京外国語大学の中野敏男教授は朝大における資料室の開設を祝いながら、次のように指摘した。

戦前、戦中、戦後にかけて分断状態にある在日朝鮮人と日本人の間を埋める作業を共通の基盤に立って作っていきたい。思想史を専攻するものとして、資料室の開設が今後の歴史研究を転換していく大きな機会となってほしいと願う。

作家の高史明氏は、この場所に立っていることが感無量だと述べ、台東朝鮮人会館接収事件(1950年3月、朝聯強制解散を理由とする建物接収に際し、抵抗した朝鮮人らが逮捕された)で捕まって、被告となったこともある。こんなに立派になった大学で、一緒になって、歴史を振り返ることは大変ありがたい。資料館の開設が、ともに、東アジアの平和を見つめる時代を切り開く契機になればいいと思う。

東海大学の吉野誠教授は、朝鮮史を研究する者として、資料の原典にもとづいて、また、事実にもとづいて、研究することが一番大切である。その意味で資料館の開設はまことに意義深いできごとであると述べた。

津田塾大学の林哲教授は、「世界の諸民族がその生きざまを記録して、残している。在日朝鮮人もその100年にわたる歩み、足跡を残すべきであり、その拠点を朝大の資料室が担うよう願ってやまない」と強調した。

(まとめ=朴日粉)

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