〈本の紹介〉半世紀のあゆみ/神奈川「日・朝友好展」記念史刊行委員会編
2012年06月09日 17:12 文化・歴史根下ろした人々の願い
第50回神奈川日朝友好展が、今年も神奈川県の横浜市民ギャラリーで行われた。
1960年4月18日、川崎駅ビルの画廊で産声を上げた日朝友好展が、今年で50回目を迎えた。一つの展覧会が半世紀以上もの間継続して開催された背景には、関係者たちの並大抵ではない努力があった。その半世紀を振り返ったそれぞれのあゆみが、本書に綴られている。
約52年の歩みは、平坦な道のりではなかった。同展が幾度と存続の危機に直面する中、一番危ぶまれたのが、35回展を迎える時だった。参加者がなかなか集まらず、もはや開催を中止したほうがいいのではとの声が浮上した。賛成派と反対派で意見が分かれ、険悪なムードが漂ったという。その場から去る者もいた。しかし、「朝・日の友好、交流がうまくいっていない今だからこそ継続しなくては」という思いから、新たに運営委員会が立て直された。
長年同展の活動に携わってきた作家の栗原治人さんは、本書で、「政治的な影響に加え、物事の考え方や思想、環境の違いを乗り越えて共に助け合い、協力し合って、平和な世界を築くことを願い第50回を迎えた」と誇らしげに語っている。
50年の間には1、2世代の交代が行われ、同展開催に関り、発展に尽力した初期メンバーらの中にはすでに亡くなった方も多い。
そうした人々の功績を称え、偲ぶページも設けられている。
写真家であり書道家の姜仙会さんは50回を楽しみにしていたが、闘病の末に今年の1月に惜別した。独学で身につけた芸術的センスを開花させ、30余年間最後まで同展に献身し続けた姿は、人々の心の中にいつまでも記憶されるだろう。
多くの人々の惜しみない尽力と積極的取り組み、またなによりも、朝鮮半島の自主的平和統一と朝・日国交正常化への願いが、今も神奈川の地に太い根を下ろしている。(梨)