北陸初中で日本市民らが雪かき、気持ちのいい人ばかり、素敵な笑顔
2012年02月11日 11:42 民族教育豪雪に見舞われた北陸朝鮮初中級学校で5日、日本市民と同胞が共同で校内及び通学路の除雪作業を行った。朝鮮学校が除雪に関する行政の補助金支給の対象外となっていることを知った日本市民の呼びかけで初めて実現した。日本市民ら21人と教職員、学父母、朝青員、卒業生ら計40人が参加した。
「教育現場を救え!」
同校につながる道路は市道だが、スクールゾーンに指定されてないため、除雪は後回しになっている。豪雪により最寄り駅から学校までの道は雪で完全に遮断されたが、教職員の手作業ではまったく追いつかない状況だった。
福井在住の知人同胞から除雪問題に悩む朝鮮学校の現状を聞いた福井インターナショナルクラブ代表の山下善久さんは、同じ地域で育つ子どもたちが制度によって差別され、通学が困難になっていることに胸を痛め、校内と通学路の除雪作業を行うことを提案。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを通じて賛同を呼びかけた。
「制度やルールを通して心通さず」
北海道朝鮮初中高級学校も同じ問題を抱えていることもあり、人々の関心は高かった。
山下さんは、今回の除雪作業が問題の解決と進展のきっかけになればとの思いで行動を起こした。
こうして、「ミッション 北陸朝鮮初中級学校の教育現場を救え!」が始動した。
当日、学校に駆けつけた日本市民と同胞たちは、除雪機での作業部隊、手作業での雪かき部隊、炊き出し部隊に別れて作業に専念した。互いにニックネームで呼び合うなど、和気あいあいとした雰囲気の中で作業が進んだ。
休憩時間には、同校生徒たちが雪かきのお礼に「チャンダン遊び」を披露。初めて見る朝鮮の民族打楽器演奏に感激し、携帯電話で写真を撮る人もいた。参加者たちは、炊き出し部隊が作った温かい豚汁や各所から届けられた差し入れを囲んで昼食をとった。和やかな雰囲気のなかでも、互いに意見や疑問をぶつけ、朝鮮学校への理解を深めた。
同校教育会の金光秀会長は、「今日は多くの日本の方々がウリハッキョのために集まってくれて心から感謝している。生徒たちが登校して喜ぶ姿が目に浮かぶ。除雪の問題に限らず、高校無償化問題、補助金問題などで、全国のウリハッキョが厳しい状況に置かれている。これからもウリハッキョを温かく見守ってほしい」と訴えた。
同校の趙成珠講師は、「私はこれまでもあらゆるツールを通して、朝鮮学校の処遇改善について訴えてきた。その過程で、いわれのない中傷を受け、傷つき、くじけそうになることも多かった。しかし、今日こうして協力してくれた方々のように、私たちに歩み寄り、手をさしのべてくれる優しい人たちもいるのだということを実感した。私たちの歩む道は、長く、険しく、辛いみちのりになると思うが、手を取り合って励ましてくれる仲間がいることを忘れてはいけない。今日ほど人の優しさが心にしみたことはない」と言って、参加者に礼を述べた。
共に守る仲間
北陸初中が所在する東郷地区で生まれ育った酒井英之さんは、「39年間同じ地区に住んでいながら今日初めて学校の敷地内に足を踏み入れた。今まで同じ地区にいるのに朝鮮学校にそれほど関心がなかった。今日集まった在日の方、日本人の方、みなさんが気持ちの良い人たちばかりで楽しく過ごせた。ここには笑顔の素敵な人が沢山いて、写真でしか見られなかったが、子どもたちの姿も、うちの娘となんら変わらないあどけない姿だ。そんな当たり前のことに気づきもしなかった自分が恥ずかしくなった。今は、より多くの人たちに、朝鮮学校のことを知ってもらいたいという気持ちでいっぱいだ」と語った。
今回、除雪作業に参加した人は40人。その他、遠方から差し入れや応援メッセージを送ってくれた人々も多かった。関係者たちは反響の大きさをあらためて感じた。今後は学校とインターナショナルクラブの連携を保ちながら、さまざまな形での交流を深め、経験を全国に拡散し、朝鮮学校の処遇改善につなげていければと考えている。
山下さんは、「朝鮮学校の方々や在日の方々から多くを学んだ。その一つが、家族やコミュニティーを愛する心だ。今日もこうして除雪作業しながら、卒業生たちの学校を愛する気持ちというものに直接触れた。そんな和を育む場所が、朝鮮学校なんだと思う。だからこそ、朝鮮学校を守っていくためにできる限りのお手伝いをさせてもらいたい。また、私たち日本人が、全ての外国の方々と分け隔てなく共存できる社会を作っていくために、力を尽くしていきたい」と語った。
【北陸初中】