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〈続・朝鮮史を駆け抜けた女性たち 14〉奴婢から貴族夫人に/鄭蘭貞

2010年03月12日 00:00 文化・歴史

封建身分制への挑戦

鄭蘭貞のイメージ画

鄭蘭貞のイメージ画

実在の女性

ドラマ「女人天下」には、どう考えてもフィクションとしか思えない女性が登場する。ヒロイン鄭蘭貞である。両班(貴族)の父と奴婢であった母との間に生まれた妾腹の娘が、妓生に身をやつしつつ「運命」に逆らい、そこで出会った王妃の弟尹元衡(?~1565)と恋に落ち、ついにはその正妻の座を手にするのである。名実ともに正妻になるために彼女は、出世し要職に就いた夫・尹元衡とその姉である王妃文定王后(第11代王中宗妃)の力を借り、法律さえ変えようとするのだ。朝鮮王朝時代に、まさかこんな女性が実在するなど信じられない話である。だが彼女は実在し、朝鮮王朝実録に20回以上その名を留め、いつ、どこで、何をしたのか克明に記録されている。たとえば明宗20年(1565)8月の条には次のようにある。

「(尹)元衡が早くから正妻を捨て愛する妓生蘭貞をして(正妻を)毒殺せしめ、大妃に請い夫人へと位をあげさせ」

(元衡曾棄其妻、 使愛娼蘭貞毒殺之、請於大妃、陞爲夫人.)

確かに彼女は実在した。だが、正史が語る鄭蘭貞は、「王妃に取り入った妖婦」「正妻を殺した毒婦」「士大夫を惑わす淫婦」、そして儒教的な身分制度を覆そうとした「公共の敵」としてである。

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