〈朝鮮と日本の詩人 102〉長田弘
2009年08月24日 00:00 文化・歴史ユッケジャンの食べかた
悲しいときは、熱いスープをつくる。
豚肉、カルビ、胃壁、小腸。
牛モツをきれいに洗って、
水をいっぱい入れた大鍋に放りこむ。
ゆっくりくつくつ煮てスープをとる。
肉が柔かくなったらとりだして
指でちぎる。
それから葱のみじん、大蒜のみじん、
唐辛子みそに唐辛子粉、胡椒、
ゴマ、炒りゴマ、醤油を混ぜて
しっかりからませてからスープにもどす。
おおきめにぶつ切りした葱を放りこむ。
強火でどっとばかり煮立てる。
溶き卵を入れ、固まるまえに火を止める。
ユッケジャン、大好きなスープだ。
スープには無駄がない。
生活には隙間がない。
「悲しい」なんて言葉は信じないんだ。
悲しいときは、額に汗して
黙って涙をながしながら
きりっと辛いスープを深い丼ですする。
チョッター! 芯から身体があたたまってくる。