〈同胞美術案内 10〉成利植/即興的な作品に込められた時代の息吹
2008年03月05日 00:00 文化弾む形と響きあう色
解放直後の美術家たちの足取りはほとんど知られてない。美術家に関するまとまった資料は最も古いもので1962年の「画集」であり、それ以前のものはほとんどない。解放直後の美術家の動きを知るには当時の画家に聞くのが有益である。
在日朝鮮人の組織的芸術活動は都内の椎名町に始まる。ここは「池袋モンパルナス」と呼ばれ、芸術家が大勢集まる場所であった(モンパルナスはフランスの地名。20世紀初頭から世界中の芸術家が集まった)。
解放直後、「池袋モンパルナス」の噂を聞きつけ、在日朝鮮人画家もここに集ったという。異国の地で美術を志すもの同士が互いに暖め合い、夜通し議論し合い、組織を作り、制作に励み、1940年代末の「朝鮮美術協会」の結成へとつながる。その原点がここであった。
今回の作品「風景」はこのころを知る画家・成利植(1930~)の作品である。絵の基本要素を確認しながら鑑賞することとしよう。