〈朝鮮と日本の詩人 46〉佐野嶽夫
2007年12月17日 00:00 文化・歴史「朝鮮の兄弟」への強烈な連帯
佐野嶽夫は本名を太作といい「棕梠の木」「航海」「太陽へ送る手紙」などの詩集で知られる詩人である。静岡県の富士山麓に生まれ、東洋大学を中退した。一時小学校教員となったが、プロレタリア詩人会に参加してナップ(全日本無産者芸術団体協議会、1928年結成)に加盟し「プロレタリア文学」「大衆の友」などの雑誌に多くの詩を発表した。ナップ解散後は郷里に帰り、農業協同組合の役員となって農民運動にたずさわりながら詩作をつづけ、戦後は新日本文学会に加わった。
佐野の代表作の一編に「プロレタリア文学」(1933年4.5月合併号)に発表した「春の歌」がある。全9連67行のかなり長い詩で河川工事場で働く80人の朝鮮労働者の苦役を素材にしている。詩人は「ああ 朝鮮の労働者/民族的差別を以ってコキ使われる兄弟」に対して同情を、日帝への怒りのこもった同情を寄せて、7、8、9連でつぎのようにうたっている。