〈朝鮮と日本の詩人 37〉大津啓一
2007年09月27日 00:00 文化・歴史朝鮮侵略への憤怒と苦痛歌う
第二檻房前の けたたましい叫び声
小村看守 たださえかん高い声が
薄い髪毛の頭のてっぺんを付きぬけて 更にかん高く
交替して控室に入ったばかりの飛田看守
明治四年の お台場の砲弾のように
至近距離の二房へ飛んだ
引出されたのは誰か
野獣の飢えの前の獲物は誰
厚い壁板 厚い床板
厚い故に容赦なく激突 乱打
徐徳鎔の肉のすべてを槌として
唇の重く 格別の気負いを見せぬ飛田が
畳のない柔道場 ここ
引き分けの 声のかからぬまま
徐徳鎔の悲鳴 おれの眼の前で殺されるか
格子の角材 千人 万人の手で磨かれても
角は角 徐徳鎔の頭蓋の英知を砕くのか
荒れ狂う東北牛の飛田
藁蒲団のように徐徳鎔をふり廻す 叩きつける