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〈人物で見る朝鮮科学史 35〉高麗の科学文化(8)

2007年07月07日 00:00 歴史

朝鮮産生薬の研究書「郷薬救急法」

朝鮮人参

朝鮮人参

高麗時代の科学技術の特徴は、それが民族科学としての性格を強く帯びたという点にある。科学は分野的には医学、天文学から、技術は金属加工から始まるが、当初は自然発生的で素朴な内容であった。しかし、その後、地理的環境、社会歴史的諸条件によって世界各地における科学技術は、それぞれの特徴を強く示すようになる。それが中世科学であり、朝鮮では後期新羅・渤海、高麗時代に相応するが、その典型を高麗における「郷薬」に見ることができる。

生薬(自然から得られる薬材)による処方を一般に漢方というが、それは文字通り中国で発展した医学であり、当然その生薬も中国産である。朝鮮でそれを用いようとすると高価となり、手に入りにくいものもある。そこで、朝鮮産生薬が必要となるが、それが郷薬である。高麗時代には、この郷薬に関する研究が深まり、その成果として「郷薬救急法」が編纂された。1236~1251年の間に刊行されたこの本は、上、中、下巻および付録からなり、とくに付録には170余種の朝鮮生薬の「郷名」とその性質、採取方法などを記述している。この「郷薬救急法」は後の世宗時代の朝鮮三大医書の一つ「郷薬集成方」の先駆けとなった書籍であり、朝鮮の伝統医学「東医」の出発点といえる。現在、高麗時代の書籍はほとんど残っていないなかで、この「郷薬救急法」だけは宮内庁図書寮に一冊だけ保管されている。

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