〈男子サッカー〉代表チームのプライドを胸に、目指すは優勝/李栄直選手

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【仁川発=李永徳】仁川アジア大会に出場している朝鮮男子サッカーチームには大阪朝鮮高級学校出身の在日同胞、李栄直選手(23、J1・徳島ヴォルティス所属)が選出されている。予選リーグでは2試合連続でボランチでフル出場を果たした。カテゴリーはU-23(23歳以下)だが朝鮮代表のユニフォームに袖を通すのは今回が初めてだ。

チームメイトとともに(右が李栄直選手、写真:盧琴順)
チームメイトとともに(右が李栄直選手、写真:盧琴順)

刺激的な毎日

アジア大会への召集の話が持ち上がったのは今年の6月頃。在日朝鮮学生サッカー代表団とともに6月25日から7月4日まで朝鮮を訪問し、アジア大会に出場する朝鮮代表の選考会に参加した。幼い頃は漠然とした夢でしか描けていなかった朝鮮代表だったが、プロサッカー選手になってからは常に視野の中に入っていたという。そのため「チャンスを掴むために必死だった」と振り返る。

チーム合流後は刺激的な毎日を過ごしてきた。

朝鮮代表のフィジカル能力の高さに驚きを隠せなかったが「負ける気はしない」。大阪朝高で培ってきた球際の強さや体力には自信を持っているからだ。

なによりも苦心してきたのは言葉の壁だった。「同じ民族なのにうまくコミュニケーションが取れず悔しかった」。それでもチームに一員として認められるために、特にピッチ上でチームメイトたちと積極的に言葉を交わしている。アジア大会の試合でもそんな姿が多く見られた。

時にはぶつかることもあると言うが、プロとしてはそれが当たり前。特にGKのリ・ミョングク選手と戦術面で意見を交換していると話す。

李選手の武器は、豊富な運動量と187センチの長身を活かした守備や、長短のキックを正確なキックを織り交ぜた展開力。一方チームのコンセプトはピッチを広く使い、サイド攻撃で相手守備をこじ開けるのこと。

「チームの要求を聞きつつも、自分の持ち味を出してどれだけアピールできるかを常に心がけている」と話す李選手は、中国戦、パキスタン戦ともに簡単にパスを捌き、時にはロングレンジの正確なパスを配給しチームのリズムをつくっていた。また相手の攻撃の芽を摘むハードタックルを見せるなど攻守で存在感を発揮していた。

18日の対パキスタン戦でプレーする李栄直選手(写真:盧琴順)
18日の対パキスタン戦でプレーする李栄直選手(写真:盧琴順)

女性ファンも、高まる期待

朝鮮代表のユン・ジョンス監督もそんな李選手に期待を寄せている。

「徐々に選手たちと打ち解けているし、今後の試合でも活躍しれくれると思う。安英学選手のようなチームから信頼を集め、闘志あふれるプレーができる選手に育ってほしい」

期待はそれだけにとどまらない。

朝鮮の記者団の中でも「あの高さは今までになかった武器だ」「ロングパスをうまく蹴る」と評価は高い。「南北共同応援団」のなかには李選手を応援する女性ファンもいた。「少し北の選手とは違った雰囲気を醸し出している李栄直選手には親近感がわく。かっこいいし、背が高いうえに、サッカーまでうまい」とモテモテだ。

選手村では部屋を一人で使っている状況だが、26日のベスト16、タイ戦を前にスイスリーグ1部でプレーする朝鮮代表期待の若手FW、パク・クァンリョン選手が入居してくるという。海外リーグは李選手にとっても憧れの舞台。「今後のためにも海外での経験をたくさん聞きたい」と意欲的だ。

開幕式や試合で多くの南の同胞たちから割れんばかりの歓声をもらった記憶は、李選手の頭の中に鮮明に残っている。

「南の人々からこんなにも歓迎されたのは初めだったし、すごく感動した。逆に北南の間に横たわる問題がどれだけ大きいか身を持って実感した。応援してくれている北南朝鮮の人々、そして同胞のためにもスポーツで明るい話題を提供したい」と決意はいっそう固まった。

「代表チームの重みは十分実感しているし、同胞選手が朝鮮代表に選出される機会は誰にでも与えられるものではない。自分のゴールは朝鮮のトップチームに上がること。もっと上を目指すうえでも一人のサッカー選手、そして同胞選手として存在感を発揮してチームの優勝に貢献したい」。朝鮮代表としてのプライドを胸に、アジア大会での飛躍を誓っている。

(朝鮮新報)