公式アカウント

〈朝鮮と日本の詩人 114〉村椿四郎

コーリヤから来た女 北風の強い晩 コーリヤから来た マリコにあった 大統領選挙のある コーリヤは熱い冬で オリンピックの年で コーリヤは燃えていた ぼくは 一九四五年以前の朝鮮を 知らないから 三代は…

〈朝鮮と日本の詩人 111〉荒川洋治

朝鮮軽視の風潮を批判 かつての朝鮮史・朝鮮語講師の寿命はみじかい 二〇代でびょうきを知り 三〇代で理由もなく 紫檀を売る人もいた どこかの会社の常夜灯からも遠い たとえば奉職先の富山大学朝鮮語朝鮮文学…

〈朝鮮と日本の詩人 110〉吉野弘

朝鮮語へのあふれる愛 韓国語で 馬のことをマル(말)という。 言葉のことをマール(말)という。 言葉は、駆ける馬だった 熱い思いを伝えるための-。  

〈朝鮮と日本の詩人 109〉高良留美子

「高句麗のやり方で」 腰まで水につかって 女たちが布をさらしている 野生の苧麻の皮をはぎ 何日もかかって織り上げた 手づくりの綾絹を   女たちの脚のあいだを 水が流れる 真白な布をなびかせ…

〈朝鮮と日本の詩人 108〉秋野さち子

楊柳のように揺れた手 その朝 おかっぱのわたしは 三ッ編のおさげの子と門の所で遊んでいた 向うから 先頭の両側に 白地に巴を描いた旗を持ち 冠をつけた白周衣の人達が列をつくり 歩調を整えて進んで来る …

〈朝鮮と日本の詩人 107〉沢村光博

ジュリアおたあさま 人の名前は 突然 失われることがあるものだから新しい名前を生きていこうとすることも   名前を失った 朝鮮難民の 頬の汚れた一人の幼女― 一五九八年 文禄の役に出陣したア…

〈朝鮮と日本の詩人 106〉金井新作

「ある国境守備兵の話」 -この不逞鮮人共を、あの立木に、縛りつけろ。目隠しだ(中略)俺達、選び出された、十人の射撃の名手 俺達の心は、この無残な銃殺を拒否した   寝射ち! 一斉射撃! &n…

〈朝鮮と日本の詩人 105〉草鹿外吉

「君を救えぼくらよ」 ソウルの詩人よ きみへの死刑宣告は 世界の詩人へのそれ きみの首にしのびよる絞め縄は 民主主義へのそれである きみのひたいにこらされた銃口は 起爆のときを待つ ぼくらにこらされた…

〈朝鮮と日本の詩人 104〉犬塚尭

韓国から来た陶工たち 窯の中では火が舞い踊る 神々の火が焼物めぐって 腕ふり上げて脚踏んで この世に狂えと舞い踊る わが身ゆだねる陶磁器は 肌をゆだねる愛人のようだ (3連18行略)

〈朝鮮と日本の詩人 103〉吉塚勤治

民族の悲しみ、怒り、怨み込め 牛、豚のぞうもつ、 その心臓、肺臓、肝臓、胃袋、腸など、 さらにえたいの知れぬぞうもつのこまぎれを ニンニクと朝鮮唐カラシにしたし、 熱い鉄炙の上で じりじりと焼いて食う…

〈朝鮮と日本の詩人 102〉長田弘

ユッケジャンの食べかた 悲しいときは、熱いスープをつくる。 豚肉、カルビ、胃壁、小腸。 牛モツをきれいに洗って、 水をいっぱい入れた大鍋に放りこむ。 ゆっくりくつくつ煮てスープをとる。 肉が柔かくなっ…

〈朝鮮と日本の詩人 101〉井上俊夫

「従軍慰安婦だったあなたに」 ああ、あなた方の手厳しい告発、あなた方の怨嗟に満ちた声は、純白のチマ・チョゴリに包まれた、老いた肉体の奥深い所から発せられていることは、もはや疑うべくもない。 私たち元・…

〈朝鮮と日本の詩人 100〉柾木恭介

ナパーム弾で焼野原 五月の空に戻ってきた 歌声を飾ろうと 花園を訪ねたあなたを 棍棒で追い出し 植民地支配の武器として名高い スミス・ウィルソン式1917年型拳銃のごつい弾を浴びせたのはだれか &nb…

〈朝鮮と日本の詩人 99〉山田今次

白いチョゴリの少女 ぼくは外套をきたまま肩をすぼめていた。 ちいさな舞台。 少女たちは きちんとちぢまって ならんでいた。 ライトは ぼんやりと まだ位置がきまらない。 白いチョゴリの少女。胸に赤いリ…

〈朝鮮と日本の詩人 98〉堀川正美

北に帰る友への絶唱 底なしの罪のなかで部落の葉緑素はつめたい涙 夜のよこっぱらはバーナーの火でえぐられっぱなし ブルドーザーとクレーンがのたうちながら 民族の魂をさがしつづけた。   異母兄…

〈朝鮮と日本の詩人 97〉吉田欣一

朝鮮の女、毅然たる姿 霜柱の崩れた泥濘の道を 毀れかけた乳母車に ブリキ、鉄屑、壜の破片、紙屑などを満載して 背中で泣き喚く餓鬼をどなりつけ 軒々の塵芥箱を 棒切れでかきまわしてゆく朝鮮の女 人々のさ…

〈朝鮮と日本の詩人 96〉松本千鶴

心の海の無数のいかり われらのこころの海には 無数の碇が沈んでいる。   大小さまざまのたたかいの歴史よ。   波しずかなる日 それらひとつびとつの歴史をしらべよ。 いかにひとり言…

〈朝鮮と日本の詩人 95〉森田進

抗日パルチザンの歌響く 燃える気魄の言葉が降り注ぐ 日本民族の犯してきた長く暗い夜と 今宵とはきっぱりと違うのだ 低く鈍い海の唸りが アリラン哀歌が聞こえる 抗日パルチザンの歌が響く 慶尚北道出身の君…