TODAY 2026年 07月 15日

〈70年の自負、100年への自信⑲〉“誰もが志望する名門大学へ”/李清敏・朝大理事長インタビュー

2026年06月22日 08:45 寄稿 主要ニュース

朝鮮大学校にとって2026年は創立70周年になる年です。当欄では、大学が歩んできた道のりや現在の教育内容、活躍している卒業生、70周年に向けた取り組みなどを多角的に紹介します。執筆は朝大の教員、関係者が担当します。(月1回掲載)

学生寮建設は改革の出発点

創立70周年となる今年、朝鮮大学校では学生寮建設事業を柱とする記念事業が進められている。学生たちの生活環境改善と朝大の未来を見据えたこの事業は、単なる施設整備にとどまらない意味を持つ。学生寮建設委員会の共同委員長を務める朝大理事会の李清敏理事長(総聯鹿児島県本部委員長)は、学生寮建設を「100周年に向けた出発点」と位置付ける。建設事業に込めた思いと、朝大の将来像について聞いた。(李永徳)

李清敏理事長

Q 理事長就任の経緯と、学生寮建設を決断した理由について聞かせてください。

私自身、理事、副理事長として15年近く大学運営に関わってきた。息子も娘も九州中高(当時)を経て朝大で学んだ。だからこそ朝大の重要性も課題もよく分かっていた。もともと私が理事長を務めるとは考えていなかったが、大学の前理事長である故・洪南基氏が健康上の理由で退任し、後任を担う人が見つからない状況が続いていた。

一方で、ほとんどが1960~70年代に建設された学生寮は老朽化が進み、耐震問題をはじめさまざまな問題を抱えていた。2021年に全学生寮の耐震診断を実施して以降、優先順位の高い建物から改修や建て替えを進めなければならないという議論も続いていた。

24年に理事長を引き受けた最大の理由は、学生たちの生命と安全である。学生寮建設は待ったなしの課題で、創立70周年を迎えるにあたり誰かが責任を持って取り組まなければならなかった。

学生寮建設には莫大な資金がかかり、幾つもの困難が予想された。正直なところ、事業を本当に進められるのかと半信半疑な気持ちもあった。しかし、学生寮建設委員会の共同委員長を務める朝大同窓会の李英一会長から、1万8千人を超える卒業生のうち、3分の1にあたる6千人以上を募金運動に結集させると力強い言葉も受け、大きな勇気を得た。民族教育の最高学府である朝大が変わらなければ、民族教育全体も変わらない。そう考え、学生寮建設事業を進める決意を固めた。

Q 建設事業と募金運動を進める過程で、どのような同胞たちの思いに触れたのでしょうか。また事業の現状と今後の展望について聞かせてください。

理事長就任後の入学式で、あるオモニが保護者アンケートの結果を持ってきてくれたのだが、そこで最も多く寄せられていた要望が学生寮の冷暖房設備に関するものだった。学生たちは夏の猛暑の中でも寮で生活している。世界に一つしかない民族教育の最高学府でありながら、そのような環境を放置してきたことに自責の念を覚えた。そこで私は、「1年以内に必ず実現する」と約束した。

実際に調査を進めると、単に設備を設置すれば済む問題ではなく、変圧設備や配線の全面改修も必要だった。それでも途中で立ち止まるわけにはいかなかった。私は常々、同胞第一主義とは「同胞との約束を守ること」だと考えている。昨年5月に学生寮の全号室への冷暖房機設置を実現し、学生や保護者との約束を果たせたことは大きな喜びだった。

この間、募金運動を通じて改めて感じたのは、卒業生たちの母校に対する深い愛情だ。各地で同窓会が開かれ、中には数十年ぶりに集まった学年もあったという。募金額そのもの以上に、卒業生たちの心が再び母校へ向かったことに大きな意味があると考えている。

多くの卒業生や同胞たちの尽力に支えられながら、今年4月には学生寮2号館の改修竣工式を迎えることができた。一方で近年の建設費高騰に伴い事業計画の調整も行い、事業完遂に向けて募金期間を今年9月末まで延長することにした。今後は1・3号館の全面改築工事を今年12月に着工し、27年12月の完成、28年4月からの利用開始を予定している。最後まで責任を持って事業をやり遂げたい。

朝鮮大学校寄宿舎2号館の改修竣工式が行われた(4月10日)

Q 朝大を発展させていくうえで、今後の課題は何だと考えていますか。

朝大が抱える課題は決して施設の老朽化だけではない。学生たちが安心して生活できる環境を整えることは大切だ。しかし、それだけでは大学は発展しない。教育内容そのものも現実に合わせて変えていかなければならない。

朝大はこれまで、同胞社会と民族教育を支える多くの人材を育ててきた。その使命は今後も変わらないが、今日では加えて、より幅広い分野で活躍できる専門性や技術も求められている。民族性と実力、その両方を高いレベルで兼ね備えた人材を育成することが重要だと考えている。そのためには、時代のニーズに即した改革が不可欠である。

Q 朝大をどのような大学にしていきたいと考えていますか。

朝大は、民族教育の百年大計を支える大学であり、同胞学生たちの誰もが志望する名門大学にならなければならない。

現在、8つの学部を社会科学系、人文科学系、科学技術系の3学系に再編し、学生が学部の枠を越えて学べる教育制度改革を進めている。民族教育と同胞社会を支える人材育成という使命を守りながら、AI、IT、データサイエンス、半導体、建設、不動産、食品産業など現代社会で求められる分野も強化し、幅広い能力を備えた人材を育成したい。

また朝大を「世界の同胞が集う大学」にしたいとも考えている。これは、在日同胞だけでなく、日本学校出身の同胞学生、中国やベトナム、ロシアなど世界各国の同胞子女も学べる大学を意味する。民族のルーツやアイデンティティーを大切にしたいと願う人々が集う大学になれば、学生たちの視野も広がり、大学そのものも大きく発展していくはずである。

朝鮮大学校創立70周年を記念する第一弾の行事となった「スポーツ&アートフェスティバル2026」(6月6日)

Q 理事長就任からの2年間を振り返り、70周年の意義と抱負を聞かせてください。

率直に言えば大変な2年間だった。一人でできたことは何もない。副理事長や理事たち、多くの卒業生や同胞たちが支えてくれたからこそ、ここまで来ることができた。

学生寮建設も教育制度改革も、すべては朝大の未来のための事業だ。私は創立70周年を過去を振り返る節目ではなく、100周年への出発点だと考えている。朝大が30年後に向けて発展し続けるためには、学生数を増やし、自立した運営基盤を築かなければならない。

学生たちが誇りを持って学び、卒業生たちが誇りを持って支え、世界の同胞たちが集う大学へ。そのような魅力的な朝大を築き、次の世代へ引き継いでいくことが私たちの責任だと考えている。

勉強と交流に非常に便利/改修された2号館での生活

改修された寄宿舎2号館の会議室にて(右端が筆者)

改修された朝鮮大学校寄宿舎2号館は、勉強や生活にとても適しているだけでなく、耐震性にも優れていて、朝大生の寮生活は、画期的に改善されました。

まず、水回りをはじめとする生活環境が非常に充実しており、不便を感じることはほとんどありません。日々の生活が快適になったことで、安心して学生生活を送ることができています。

また、以前住んでいた8号館にも、昨年ようやく各寝室に冷房が設置されましたが、2号館では、寝室だけでなく学習スペースにも空調が完備されており、格段に勉強に集中しやすくなりました。

とくに大きな変化は、「共有スペース」と「会議室」ができたこと。以前は他学部の学生とミーティングをする際、わざわざ研究棟の教室を利用申請して借りなければなりませんでした。それが今では、寄宿舎内でいつでも集まれます。ミーティングはもちろん、グループで勉強する際の空間としても非常に便利です。

さらに、共有スペースには気軽にくつろげる場所や、仲間と食事をしながら楽しく過ごせる場所もあります。そのため、互いに自然と顔を合わせる機会が増え、学生同士のつながりも以前より深まったと感じています。生活にメリハリが生まれるのも大きな魅力です。

改修された2号館だけでも十分素晴らしい環境ですが、今後新しい寄宿舎も建設されると聞き、とても期待しています。

このような素晴らしい環境で学べるのは、多くの同胞たちの愛情があるからこそです。心から感謝いたします。この愛情と期待に応えられるよう、さらに学業に励み、将来は同胞社会に貢献することで恩返しをしていきたいです。

(盧翔基・政治経済学部3年)