TODAY 2026年 08月 13日

〈トンポの暮らしを支える/こちら同胞法律・生活センターです!70〉身寄りがない場合の「終活」について

2026年06月16日 08:00 寄稿

Q 私には身寄りがないため、老後に不安があります。「終活」という言葉をよく耳にしますが、何から始めればよいかわかりません。

A 身寄りがない場合、亡くなった後の葬儀や部屋の片付け・引き払いなどを誰がやってくれるのか、心配になりますね。

人が亡くなると、葬儀の手配、公共料金や携帯電話の解約、賃貸物件の退去、医療費の精算などさまざまな事務手続の対応が必要となります。通常は、ご遺族がそれらの事務手続を行うことがほとんどですが、さまざまな事情で頼れる家族がいない場合、それらの手続は一体誰が進めてくれるのでしょうか。また、家族がいる場合であっても、手続の手間や負担をかけたくない場合、どうすればいいでしょうか。

その不安を大きく軽減してくれるのが「死後事務委任契約」です。

「死後事務委任契約」とは、自身が亡くなった後のさまざまな事務手続を、弁護士などの第三者に委任する契約のことです。まだ元気なうちにこの契約を結んでおくことで、身寄りがある方と同じように、死後のさまざまな手続をスムーズに進めることができるのです。

「死後事務委任契約」がなくても、お住まいの自治体が遺体を引き取って火葬を行いますが、あくまでも自治体のルールに則って事務的に行われるだけになってしまいますので、「思い描いた葬儀」は行われません。また、賃貸物件の明渡しや遺品整理が行われず放置されたままになり、大家さんや不動産管理会社に迷惑をかけることにもなりかねません。

「死後事務委任契約」を締結しておくことで、周囲に迷惑をかけることなく、最期を迎えることができます。

Q 「遺言(遺言執行)」だけではだめでしょうか?「死後事務委任契約」を結ぶ意味やメリットを教えてください。

A 遺言は、「自分の財産を、誰に、どのような割合であげるか」ということを決めるものです。もちろん、遺言に、「遺影の写真はこれにしてほしい」「部屋の遺品は全て処分してほしい」などと書いても遺言の効力自体に問題は生じませんが、これらは「付言事項(ルビ:ふげんじこう)」という位置づけのものであり、遺言者からのメッセージやお願いでしかなく、法的な拘束力はありません。

また、遺言が公正証書遺言ではない場合には、本人が亡くなってすぐに誰でも勝手に封をあけて中身を見ていいわけではなく、家庭裁判所で「検認」という手続を必要があるので、遺言の内容を知るまでに時間がかかってしまいます。遺言の内容を確認して遺言執行者が動き出すまでには、数週間から数カ月近くかかることも珍しくありません。

ですが、死亡直後のさまざまな事務手続き(葬儀や火葬の手配、賃貸物件の退去や遺品整理など)は待ったなしで押し寄せます。身寄りのない方が遺言しか残していない場合、これらの死亡直後のさまざまな事務手続が進まなくなってしまいます。「死後事務委任契約」を結んでおくことで、亡くなったその日から、契約に基づいてさまざまな事務手続を進めてもらうことができます。

Q 遺言や「死後事務委任契約」以外に準備しておくことはありますか。

 遺言の準備や「死後事務委任契約」の締結に加え、「任意後見契約」を締結するということも選択肢として検討してみてください。

「任意後見契約」とは、判断能力がしっかりしているうちに、認知症やさまざまな障害を発症する場合に備えて、あらかじめ自身が選んだ人(任意後見人)に自身の財産管理や身上監護などを行ってもらうよう契約で定めておく制度です。

判断能力がなくなった後に家庭裁判所に後見人(成年後見人)を選任してもらう「法定後見」という制度もありますが、「任意後見契約」は、元気なうちに、「この人なら安心して財産の管理などを任せられる」という人を自身で選ぶことができます。判断能力がしっかりしているうちに、依頼したい人と、支援内容を詳細に決め、公証役場で契約書を作ります。例えば、医療機関へ入院手続、居住不動産の維持管理、預金口座の出金・入金・解約の手続など、具体的に任せる内容を決めて、公正証書によって契約を締結するのです。

その後、認知症の症状が進むなどして判断能力が衰えてきた段階で、家庭裁判所に申立てをし、裁判所が任意後見監督人を選任すれば、公正証書の内容に基づいて後見事務がスタートするのです。

Q まだまだ元気で健康なのですが、遺言を準備したり「死後事務委任契約」や「任意後見契約」を結ぶのは早すぎますか?

A 認知症を発症するなどして判断能力が低下すると、法的に有効な契約を結ぶことが難しくなってしまいます。また、「万が一」はいつやってくるかわかりません。安心して最期を迎えるための準備に早すぎるということはありません。「死後事務委任契約」、「任意後見契約」、遺言をセットで準備することで、老後、そして亡くなった後までの不安を、大きく減らすことができるでしょう。

まずは信頼できる弁護士や司法書士などの専門家に一度ご相談してみてください。センターには同胞の「終活」について相談できる同胞の専門家がいますので、不安なことや知りたいことがありましたらセンターまでご連絡ください。

(金星姫、弁護士、同胞法律・生活センター相談員)