【投稿】「祖国の愛はあたたかい」に酔う/張弘順
2026年06月04日 09:39 寄稿朝鮮音楽の祝典を鑑賞して

朝鮮音楽の祝典「祖国の愛はあたたかい~愛の民族楽器とともに60年」のようす
文芸同中央などが主催した朝鮮音楽の祝典「祖国の愛はあたたかい~愛の民族楽器とともに60年」(5月17日)を長女と一緒に鑑賞した。ウリ音楽が大好きな二人は今日のこの日を待ちわびていた。
今年が、祖国からウリハッキョに民族楽器が贈られて60年にあたる年だと知り、あらためて感慨を深くする。
60年前、私は茨城初中高に赴任して2年目の新米教員。校庭で華々しくカヤグムの贈呈式が行われ、胸を熱くした思い出がよみがえった。
開場前の長蛇の列の中には私のような高齢者も見うけられ、知っている方もいるかもしれないなどと思っていると、「ソンセンニム!」と声をかけてくれたのは30年前の教え子であった。何と嬉しい再会だろうか。そしてまた、ずっと会いたかった同僚たち、共に民族教育に青春を捧げた元教員夫婦に会えたのは本当に幸せであった。
いよいよ公演1部が始まった。
演奏者が舞台に姿を見せるや会場からは万雷の拍手が起こり、舞台を埋め尽くした民族楽器とその演奏者の輝いている姿に、会場はどよめいた。
歌劇団団員をはじめ日本でトップクラスの演奏者たちの、このような民族楽器の大編成演奏は私にとって初めて。期待に胸が高鳴る。
1曲目、新民謡として歌曲で有名な名曲「モランボン」は、へグムやヤングム、カヤグム、チョッテなどのしらべに乗って美しい平壌を鮮やかに浮かび上がらせ、そこに住む楽天的で誇らしい人々の姿を彷彿とさせた。指揮者の見事なタクトに繊細な民族楽器の響きが会場を包み込む。何といっても私たち朝鮮民族の独特なチャンダンに体が解き放たれていく。
私はこの贅沢な舞台を目に焼き付けようと目を凝らしたのだが、コンミス(演奏者のリーダー)のソへグム奏者・尹慧瓊氏からは目が離せなかった。
隣席の長女は、舞台中央奥にいる、在日朝鮮学生中央芸術コンクールで私たちを虜にした学生たちの姿を見つけ、「朝大生になったのだ!」とささやいた。
曲が終わるたび、なかなか拍手が鳴りやまない。
3曲目にチャンセナプ協奏曲「協同農場の慶び」が演奏された。
バイオリン協奏曲やピアノ協奏曲などはよく聴くが、チャンセナプ協奏曲は初めてかもしれない。
民族管弦楽をバックにセナプ特有の鋭く力強い響きながら、あくまでもやさしく柔らかい音色を駆使しての圧巻の演奏は、演奏者の高い技術と音楽性のたまものだろう。素晴らしかった。惜しみない拍手がいつまでも続いた。
1部最後の演目は民族管弦楽「普天堡の烽火」であった。虐げられた民衆の悲しみを、まるですすり泣いているように、これほど悲しく、そして美しく奏でられるものなのか。熱いものが体の奥からこみあげてきた。
2部には歌や踊りの演目が加わり、舞台はいっそう華やいだ。
長野初中の男子生徒4人による民族打楽重奏「夜明け」は聴衆をうならせた。
ぴたりと合った息遣い、高く低く、自由自在に繰り出される多彩なチャンダンの音色。ケンガリもチャンゴも、チンもプクも、それに乗り移ったかのような奏者の手からかれらの魂の叫びとなって会場を熱狂の渦に巻き込んだ。熱い拍手を送りながら私は、ウリハッキョで学ぶかれらに対する誇らしい気持ちでいっぱいになった。
私の大好きな「青山里の豊年」は合唱付きの管弦楽としておなじみであるが、今回は民族楽器と西洋楽器を配合しての交響楽。農村の夜明けから活気づく村の様子、豊作を祝う村人たちの喜びを余すところなく壮大に描いていた。
演奏に全身をゆだねながら思った。この曲は朝鮮の宝ものだと。
演奏の合間に功勲芸術家である高明秀さんが紹介された。
1部で演奏された曲すべてかれの編曲になる。どんな話をするのか興味津々だ。
かれは60年前の祖国から贈られてきた民族楽器に触れ、それ以来民族器楽を守り発展させてきた人たちの一人だと知った。
46年もの間歌劇団に属し、作曲、編曲をしている。高明秀さんがいなかったらこの大編成の民族器楽演奏も聴けなかったかも知れないと思うと、かれに特別な拍手を送りたくなった。
公演ラストは、文芸同中央の尹忠新委員長の指揮で「祖国の愛はあたたかい」を来場者たちが演奏者たちと一つになり声高らかに歌った。
ウリ民族音楽に酔いしれた素晴らしいひとときは、私に限りない勇気を与えてくれた。
(茨城県水戸市在住)