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大阪中高創立70周年記念同胞大祝典/記念事業に込めた思い

2023年05月22日 09:22 主要ニュース 民族教育

「開花期」に向け、力を一つに

「同胞たちの民族教育に対する情熱や関心の高さが、今日集まった3千人を超える来場者の数に表れていた」。大阪中高創立70周年記念同胞大祝典を終え、70周年記念事業の実行委員長を務めた高元亨さん(63、24期)は、感慨深げに語った。イベント当日は前週から雨予報が続き、来場者の数は当初の見立てよりも下回ることが懸念されていた。しかし蓋を開けてみれば、雨天の中、会場に入りきらず、場外まで人があふれるほどの盛況ぶり。小さな子どもから高齢者まで、幅広い世代が参加する「同胞大祝典」の名にふさわしい場となった。

幅広い世代が協調

民族楽器のリズムに合わせながら歌い踊る同胞たち

70周年記念事業の準備が段階的に始まった2020年度から、大阪朝高と東大阪中級とが統合し、新たなスタートを切った大阪中高。今年度からは府内に8つあった初級学校が4つに再編されるなど、同校の記念事業が推進される過程は、最大の在日同胞数を誇る大阪の地で、民族教育を守り発展させるための取り組みが進められた重要な転換期でもあった。

そうした中、昨年6月に発足した実行委員会では、記念事業の位置づけを「新たな教育網のもと運営される大阪民族教育の発展に向けた跳躍の機会」にすると確認し合ったという。高元亨実行委員長(府商工会会長)を筆頭に、同校の教員や教育会、アボジ・オモニ会、青商会、朝青、女性同盟、総聯の各団体から加わったメンバーで構成された実行委では、その日を皮切りに、大阪中高の「開花期」に向けた歩みを一歩ずつ進めていった。

記念事業の根幹には、▼大阪民族教育の輝かしい未来を担保する流れをつくり、▼校舎移転および新校舎建設に関する展望を提示し、同胞たちに信頼と希望を与えること、▼1万3千人を超える広範な卒業生を集め、同窓会および大阪中高を拠点とするネットワークを再構築すること―を掲げた。委員らは、内外の機運を高める各種「記念行事」、今後の重要なネットワークとなる「同窓会」、新たな教育ビジョンを提示する「記念公演」の3部門に分かれてそれぞれ準備に励んできた。

大阪中高の生徒たちによる芸術公演

今年1月に総会が行われ、再構築への火ぶたを切った連合同窓会。総会を機に会長に就任した趙太植さん(60、28期)は「母校への恩返しがしたい」と会長を務める決意を固めた。総会を開くに至るまで、先頭にたち、各期の要となる卒業生たちに声かけをするなど会の立て直しを図った趙さん。「人の集め方一つ、宣伝の仕方一つ、どれをとってもこれまでと違い、幅広い世代が関わり合いながら事業を進めたことで、これほどの人が集まったと思う。役員に加わってくれた30代や40代の新しい発想にも感謝したい」と、準備期間を振り返った。

大祝典の日、「先代たちが築いてきたものを継承・発展させ、若い人たちに良いものを残していけるよう頑張りたい」と舞台上で決意した趙さんは、「少子高齢化や学校の統廃合など困難は尽きないが、朝高の卒業生としてやるべきこと、守るべきものがある」として、大阪民族教育の発展に寄与する決意を表明した。

朝高というシンボル

同校の教員たちもまた、自身らに注がれる同胞たちからの無限の愛を受け取り、それぞれの決意を新たにしている。大阪中高では、記念事業の推進と足並みを合わせて、教員たちが生徒の年齢や心理的な特性に合わせた新たな教授法、研究にもチャレンジ。その一環で今年度からは、中国語、IT、ビジネスの選択授業を開始するなど、「U-FIELD」(「Foundation(基本)」、「Interaction(共育)」、「Evolution(進化)」、「Liveliness(活力)」、「Display(発信)」)の学校理念が込められたブランディング事業に力を注いできた。

舞台上の催しに、終始歓声や拍手が飛び交った。

「多くのチャレンジと経験ができた期間だった」と語るのは同校教員の金知世さん(25、62期)。20年春に朝鮮大学校を卒業後、大阪中高へ赴任。「民族教育を通じて受けた愛や学びを、自らの教授・教育活動を通じて恩返ししたい」との思いで、教員生活を送ってきた金さんは、この間、生徒たちと共に学校の沿革を振り返り、記念事業の意味を考える過程で、「知らずうちに受けてきた同胞たちからの愛を痛感した」という。さらに「1年の頃はただ『ウリハッキョが好き』と言っていた生徒が3年になり、『U-FIELDを具現した学校を築くために教員になって戻ってきたい』と自分の進路を見出す姿」を目の当たりにしながら、「今後を担う生徒たちが、『自分たちがつないでいきたい』『つないでいかなければ』と貴重な気づきを得たことが70周年の最も大きな意義ではないか」と語った。

1952年に生野区田島で始まった大阪中高の歴史は、57年に東大阪市玉串へ、73年には現在の東大阪市菱江へと拠点を移しながらも、同胞たちの愛情に支えられ、途切れることなく脈々と紡がれてきた。

腕相撲対決は大きな盛り上がりをみせた

かつて府教育会や同校の教育会で会長を務めた蔡成泰さん(77、10期、長寿会会長)は「民族を愛し、祖国を愛し、同胞社会を守ろうとする人材が大阪に存在するのは、この学校があってこそ」だと話す。約60年前、朝高創立10周年のときに同校を卒業した蔡さん。大阪における同校の存在意義を強く感じるからこそ、「孫世代が思い切り学び育っていけるように、子どもたちの世代にもその意義を伝え、やれることを尽くしたい」と話した。

文化祭や公開授業、記念公演といった70周年を祝うさまざまな記念行事が開催され、その集大成として開催された今回の大祝典。高元亨実行委員長は、「(大祝典に参加した)大阪の同胞たちは民族教育がなかったらダメだと、これがあるから代を継ぎ民族性が守られていることを、行事に参加して再確認したと思う」と語気を強める。そのうえで「大阪中高は大阪同胞社会のシンボル。そのシンボルを守り発展させるには、同窓生たちのつながりが何よりも大事になる」とし、「今回再構築されたつながりを息の長いものに、そして現役の保護者や学校関係者らと協力し合いながら民族教育を盛り上げていきたい」と話した。

(文・韓賢珠、写真・盧琴順)

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