米南首脳会談を非難/南朝鮮、周辺国の反応
2023年05月11日 09:31 朝鮮半島 南朝鮮情勢悪化を招く「ワシントン宣言」
米国のバイデン大統領と南朝鮮の尹錫悦大統領は4月26日、首脳会談を行い「核協議グループ」の創設と米戦略資産展開の拡大など拡大抑止力の向上を目的とする「ワシントン宣言」を採択した。南朝鮮と周辺国では朝鮮半島と地域の平和と安全を脅かす同宣言への非難の声が高まっている。

米南首脳会談を糾弾する南朝鮮の市民ら(写真はすべて統一ニュース)
朝鮮半島を核戦場へ
南の最大野党・共に民主党の李在明代表は、米南首脳会談について「大統領が歓待を受けたようだが、経済、そして安保において非常に多い問題点が新たに生じた」とし、「朝鮮半島を取り巻く国際情勢が激変している。安全保障は脱冷戦以降最大の危機に直面した」と非難した。
南朝鮮メディアからも、尹錫悦大統領の訪米を朝鮮半島を核の戦場に作ろうとする「戦争訪問」「売国訪問」だと糾弾する声があがっている。
ハンギョレは、朝鮮半島に送り込まれる米国の戦略手段の定例的な公開は拡大抑止ではなく、むしろ「拡大危機」になると主張した。同紙は、「ワシントン宣言」で戦略原子力潜水艦の朝鮮半島への展開が公布されたのに続いて、米太平洋空軍司令官が日本のメディアとの会見で米戦略爆撃機が定期的に朝鮮半島と周辺で活動し、南朝鮮に上陸すると言った事実に言及。海中に深く隠れて作戦を展開する戦略原潜が水面に浮上して南朝鮮の港に入り、空中で作戦を行う戦略核爆撃機が南朝鮮の地に下りるのは不正常な状況だとし、米国と南朝鮮のこのような軍事行動は周辺国の敏感な反応を起こして緊張と危機をより深化させると懸念を示した。
慶尚北道の金泉日報は「米国の好戦性さと尹錫悦大統領の屈従」と題した記事で、「尹錫悦の対外政策が非常に危ない。かれの訪米は、主権をそっくり米国に渡し米国に対する屈従と隷属を深め、米国の手先として戦争の火の穴に飛び込むようだからだ」と糾弾した。

尹錫悦大統領が米国へと向かった4月24日、非常時局会議推進委員会がソウルで記者会見を開き、首脳会談に対する警告を送った
周辺地域の平和を破壊
中国外交部の代弁人は4月27日、首脳会談で採択された「ワシントン宣言」と「共同声明」が朝鮮半島の情勢をいっそう統制不可能な状態へ追い込んでいることに言及した。また、米国の行為は陣営間の対決をそそのかして他国の戦略的利益を害し、朝鮮半島の緊張した情勢を悪化させ地域の平和と安定を破壊するものとし、中国はそれに断固反対すると強調した。
中国社会科学院東アジア問題の研究員は、もし米国が原子力潜水艦を含む核兵器の展開へ進むなら、これは朝鮮の核兵器開発強化だけでなく、中米関係の追加的悪化を招くと述べ、「米国が中国領土近くに原子力潜水艦を展開するのを容認できない」と強調した。
環球時報は「ワシントン宣言」について、「朝鮮半島の情勢をさらに緊張させるとともに、その中に含まれている中国と関連した事項は南朝鮮にとって懸念となるだろう」と評した。
また、朝鮮半島問題が長期間、解決されていない根源は米国にあるとし、「米国の核戦力を朝鮮半島に送り込めば朝鮮半島の安全環境をいっそう激化させるだろう」と指摘した。
ロシア外務省の公式代弁人は同28日、核兵器使用共同計画に関する米国と南朝鮮の合意は「明白に、不安定を作り上げる性格を帯びており、地域の安全と全地球的安定に深刻な否定的結果を及ぼす」とし、「米国とアジア太平洋地域の追随勢力は、国際安全において構造破壊的な計画であるいわゆる核拡大抑止計画を当該地域で再現するための方向へ進もうとする意向を挑発的にあらわにした」と指摘した。そして「われわれは、西側集団のそのような行動が、安全分野で危機現象を生じさせて軍拡競争をそそのかすこと以外に、何の結果ももたらさないと確信する」と述べた。
ロシア科学アカデミー東方学研究所のある専門家は、「米国の複数の大統領がすでに朝鮮を引き続き脅かし、軍事訓練を繰り広げたが、何の効果もなかった、米国は朝鮮の発展に『不安』を覚えている」と主張。雑誌『国際生活』は、「米国とその追随国は『北の核脅威』を口実に軍事演習を引き続き行っており、長年にわたって朝鮮に制裁を加えているが、何の結果もない」と指摘した。
対朝鮮政策を対話へ
米シンクタンクのケイトー研究所のダグ・バンドウ上席研究員は、外交専門誌『フォーリン・ポリシー』に寄稿した文で、米南首脳会談の結果を「米国の空虚な勝利」と評し、対朝鮮政策を対話へと転換することを主張した。
同氏は、「米国が南朝鮮を防御するという約束は次善の策だ」とし、「朝鮮半島のための平和的な方式の協定を模索するのがいいし、そのためには当事者らが対話しなければならない」と強調した。
そして、米国と南朝鮮の対朝鮮政策は失敗したと評価し、「南朝鮮と米国は朝鮮に関与する新たな戦略を立てる必要がある」と提言した。
(朝鮮新報)