公式アカウント

〈ものがたりの中の女性たち58〉全てを捨てた先で全てを得るー芙蓉

2022年07月06日 08:00 寄稿

あらすじ

芙蓉の花

平壌に住む妓生芙蓉は営門の吏房の娘で、美しく詩畫琴書に秀でていた。、妓生であったが、その気品と身持ちの固さで淑女と呼ばれる。都に住む前吏曹判書の子息金有聲は、ひとり親の母と暮らしている。有聲は文章と音楽に秀でた美しい若者である。彼は平素から両親の命令や見合いによる結婚に異を唱えている。彼は景勝地を訪ね平壌に至ると、芙蓉の評判を耳にする。求愛の詩を一首捧げ、詩歌をやり取りし芙蓉と愛し合うようになる。だが有聲は一旦帰宅しなければならず、芙蓉は六十行になる「相思曲」をしたため傷心を慰める。それ以降芙蓉は外出を一切せず、金有聲は、平素から芙蓉に劣情を抱いていた地方官吏通引である崔(チェ)萬(マ)興(ヌン)の嫉妬により、トラブルに巻き込まれ足止めされる。

好色な監事が平壌に新しく赴任すると、崔萬興は彼に取り入ろうと芙蓉を接待の舟遊びに強制的に参加させる。しかし芙蓉はこれに抵抗し川に飛び込むが、漁夫によって命を救われる。一方、有聲の親友が暗行御史として平安道を内偵、平壌監事の好色と悪政を弾劾、処罰し、芙蓉は有聲を慕い「相思曲」を都に送る。詩を読んで、死んだものと思っていた芙蓉が生きていることを知り急いで彼女の元に向かう。

その後、有聲は科挙に及第、成川府史として芙蓉と共に任地に赴き幸せに暮らす。

第五十八話 芙蓉想思曲

「芙蓉想思曲」は作者、創作年不詳の国文短編小説。旧字体の活字本があり、主人公の妓生芙蓉(プヨン)が恋人金有聲(キムユソン)との別離の際に書いた「相思別曲」がそのまま題名になっている。後に刊行された活字本の題名は「芙蓉の想思曲」である。美しい平壌妓生とソウルの貴族の子息との波乱万丈なラブストーリーには、朝鮮王朝期の名妓であり女流詩人である芙蓉堂金氏(1813~1860)の美しい詩とそっくりな詩が挿入され作品を彩っている。

Facebook にシェア
LINEで送る