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【詳報】〈ウトロ放火事件〉被害者に加害性押しつけ、差別を正当化

2022年06月15日 10:55 権利

第2回公判で

ウトロ地区の家屋に火をつけたとして、非現住建造物等放火などの罪に問われた奈良県在住の男(22、無職)の被告人質問が7日に行われた。約2時間半に及んだ裁判では、被告の誤った歴史認識と、朝鮮半島にルーツを持つ人びとへの差別感情が浮き彫りになった。

放火で燃えた建物の一部

自身の行為を正当化

「日本に在住しているいないに関わらず、韓国人に対し敵対感情があった」。冒頭、朝鮮籍・「韓国」籍保有者への感情に対する弁護側の質問に対し、被告はこう述べた。ウトロ地区への犯行に至った動機については「名古屋での放火が、期待したほど問題視されなかったから」だとし、放火の目的を「ウトロ平和祈念館の開館阻止」であったと供述した。

被告は昨年7月24日、名古屋の民団施設と、近隣する学校に火をつけていた。その約1カ月後の8月30日、ウトロ地区での犯行に及んだ。名古屋での放火が注目されないことを不服に思った被告は、インターネットを通して知ったウトロ地区住民「不法占拠」のデマを信じ「抗議の意を示すため」火を放ったという。

被告は法廷でも「最高裁判決で立ち退き命令がでたことに変わりはないし、その判決は取り消されていないから有効なものとして残っている。明確な違法滞在だ」と事実と異なる主張を繰り返しながら、ウトロへの放火について「反省はしているが、後悔はしていない」と悪びれる様子もなく淡々と述べた。

実際は、2000年に最高裁で立ち退きを命じる判決が出た後、ウトロ地区住民らは地権者との合意のもと地区に住み続けているため、不法占拠には当たらない。弁護士からも「独自の法解釈では」と指摘があったが、被告は自身の主張を曲げようとしなかった。さらに「ウトロに移り住んだ人たちは戦争被害者だといっているが、実際は戦後、自主的に移り住んだ人たちだと聞いた。国に帰れたはずなのに帰らず日本に居座って援助を受けようというのは、いかなるものか」と発言。そのあげく「植民地支配は被害妄想」であると妄言を吐き、ゆがんだ歴史認識を露呈させた。

4月に開館したウトロ平和祈念館

あぶりでた日本の闇

「被告の供述は、日本社会の深い闇をあぶりだした」。コリアNGOセンターの郭辰雄代表理事(一般財団法人ウトロ民間基金理事長)は、公判後の会見で声を落とした。

被告はニュースやインターネットを通じて、朝鮮半島にルーツを持つ人びとへ「敵対感情」を持つようになったとしている。一方で朝鮮人との直接的な関わりは一切なかったことも明かした。

また、親や教師など周囲にも同様の排外的思想を持つ人が存在したことが供述で明らかになっており、郭代表理事は「人種差別的な思想を育む土壌が十分にあったことを、より深刻に考えなければならない」と訴えた。

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