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〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 10〉近代日本の罪業を、地の底から撃つ/上野英信

2019年01月29日 09:00 主要ニュース 文化・歴史

「戦後文学エッセイ選12 上野英信」影書房06年

今月15日、松本昌次さんが亡くなった。未来社で編集者を務め、影書房を創設し、花田清輝、埴谷雄高、井上光晴をはじめ戦後文学者の本を多数世に出した功績、時代と社会、政治と文化を射抜く鋭い批評眼から多くを学んだ。松本さんが編まれた「戦後文学エッセイ選」(全13巻)のうち、記録文学者・上野英信の巻を開いてみる。

松本さんは上野英信について「その生涯は、戦後日本の経済発展を、まさに、地の底から支え、生き、死に、そして見棄てられた炭鉱夫たちとともに歩むことに捧げられました」「上野さんは、生涯を賭けて、国家による理不尽な仕打ちによる死者たちを弔いつづけたのです」と語っている。上野自身、筑豊の炭鉱夫となって、戦後日本の地底を文字通り這うように生き、搾りとられるだけ搾りとられ、棄てられた人々の生態を、「追われゆく坑夫たち」「地の底の笑い話」(いずれも岩波新書から近年復刊されている)をはじめ、生き生きと、しかし日本資本主義への怒りとともに記し続けた。

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