【インタビュー】白頭大幹を縦走した写真家、ロジャー・シェパードさん


“人々の往来を通して、軍事境界線をなくす”

朝鮮半島の北南にまたがる山脈「白頭大幹」を踏破し、山並みの美しい風景を撮影してきたニュージーランド人写真家、ロジャー・シェパードさん(50)。初来日したシェパードさんが見た朝鮮について、また自身が考える朝鮮半島の平和と統一について、話を聞いた。

シェパードさんが撮影した白頭山天池(両江道三池淵郡、2013年8月)

シェパードさんが撮影した白頭山天池(両江道三池淵郡、2013年8月、提供写真)

―分断された白頭大幹を縦走したのは史上初めてのことであると聞いた。北と南の山々の写真を撮り続けてきた思いについて聞きたい。

白頭大幹は朝鮮半島の全ての山河にとって母のような存在であり、人々の「生」の根源でもあるといえる。白頭大幹は美しいだけでなく、長い歴史を持っている。

私は南北の山々が一つにつながっていることを通して、コリア(南北朝鮮)が一つであることを実感した。朝鮮の白頭大幹の山々はほとんど手つかずの自然の状態で、非常に美しかった。

分断状況にある現在、朝鮮半島の人々は、南北を自由に行き来することができず、美しい山の風景を見ることもできない。このような状況の下で、南北朝鮮の人々に「自分たちは一つである」ということを、写真を通じて感じてもらうことが、外国人である私が果たすべき役割だと思っている。私の仕事を通じて、朝鮮の平和統一に向けたアプローチができたらという思いを強く抱いている。

―2011年に初めて朝鮮を訪れたというが、行く前と実際に行ってみた後で、印象がどのように変わったのか。

ロジャー・シェパードさん(忠清北道報恩郡・俗離山頂上の天王峯にて)

ロジャー・シェパードさん(忠清北道報恩郡・俗離山頂上の天王峯にて、提供写真)

朝鮮に行く前はいろいろな話を聞いていて、もしかしたらお金を盗まれるのではないかとか、監獄に入れられるのではないかといった一抹の不安があった。西側メディアの流す情報にふれる中で、そのような不安を抱いていたのだと思う。

朝鮮に行く前に、南朝鮮にも何度か足を運んだことがあったが、最初の頃は、コリアがなぜ二つに分かれているのかについてさえ、よく知らなかった。しかもコリアといえば南朝鮮のことを指していて、朝鮮は少し別の場所だというふうに認識していたふしもあった。

しかし、今回の朝鮮訪問をきっかけに、朝鮮半島がおかれた状況に対する真の理解が自分の中に芽生えた。そこから私は、朝鮮半島の歴史や文化について勉強するようになった。南北の歴史観の違いについても知るようになった。

―朝鮮で出会った人々はどのような人たちだったのか。

朝鮮では、「朝鮮・ニュージーランド親善協会」のメンバーである朝鮮の人々と行動を共にした。ここ数年間、付き合いが継続している。数十日間にわたって一緒に山を登ることもあり、今ではとても親しい友人関係を築くことができた。

朝鮮の人々は非常に純粋で、人間らしいと感じた。彼らと接する中で、思想的な違いはあっても、南北朝鮮の人々は言葉や文化はもちろん、仕草などもよく似ているということも分かった。ユーモアのセンスも似ていて、人々が笑う「ツボ」も大体同じなんだというふうに感じた。

両江道・頭流山に向かう道でキャンプを行っている様子(場所は両江道白岩郡)

両江道・頭流山に向かう道でキャンプを行っている様子(場所は両江道白岩郡、提供写真)

またうれしいことに、私の写真を見た朝鮮の人々の反応は、とてもポジティブなものであった。彼らはみな、一つの朝鮮、民族の統一を願っていた。

―朝鮮の統一に対してどのように考えているのか。

私は、南北統一を実現する前の段階で、2つのコリアの間に平和・協力関係が構築されなければならないと思う。これは、文化やスポーツ、経済交流などを通じてなしうるはずだ。一旦これが達成され、長年にわたって維持されれば、われわれはそれを統一コリアと定義していくべきではないだろうか。

北と南はイデオロギー的に見れば対立しているが、どちらか一方がもう片方を説き伏せようとするのではなく、二つの政府と異なる政治文化がどのようにして共存できるのか、その方法を模索する必要があると思う。

ソウルの「GS25」(南朝鮮で展開されているコンビニエンスストアチェーン)で買ったビールを満喫しながら平壌へ移動し、平壌では少々堅苦しい雰囲気の漂うカフェでコーヒーを飲む…(笑)。これは私が想像する一つのコリアに広がるであろう光景、ダイナミックで多様性に富んだコリアの姿だ。

人々が自由に南北を往来することが現実となれば、結果として軍事境界線はなくなっていくものだと思う。

―現在、朝鮮半島の情勢は非常にきびしいが、解決への近道は。

われわれの前には朝鮮半島の核武装化の問題が横たわっているが、この問題をめぐって時計の針を逆戻りさせることは非常に困難な状況となっている。このような状況を少しでも良くするためには、対話が必要である。この対話は、とりわけ米国が朝鮮に対して提案するべきだと思う。

写真集に収録されている朝鮮半島の地図。シェパードさんが登った山々が記されている(提供写真)

写真集に収録されている朝鮮半島の地図。シェパードさんが登った山々が記されている(提供写真)

米国は南朝鮮との合同軍事演習をやめるべきだ。私は反米主義者ではないが、米国の核の脅威がなくならない限り、朝鮮の核もなくならないと考えている。しかし米国にとっては、朝鮮半島の緊張状態を維持することが、南朝鮮と日本に巨額の軍需品を売る口実になる。米国の対アジア政策は、常に米国にとって都合の良いものなのだ。

一方で、南朝鮮の政治も変わる必要がある。次の大統領選で、南朝鮮の人々が北との平和・共存の実現を優先する進歩的なリーダーに投票することが望ましい。また、南朝鮮は南北統一問題について、自らが主体的に解決していく意思を、同盟国や周辺国に対して表明するべきだと思う。

―今後のプランについて知りたい。

来年は2回ほど朝鮮に行って、白頭大幹の中でもいまだ登ったことのない地帯を踏破し、写真を撮ろうと思っている。またそれらを収録した改訂版の写真集もつくる計画だ。そこには個人的な経験なども詳しく盛り込んで、既存の写真集よりもさらにメッセージ性を持たせたいと思っている。

(金里映)

■プロフィール:ロジャー・シェパード(Roger Shepherd)/ニュージーランド出身。写真家、探検家。現在、南朝鮮全羅南道求礼智異山在住。06年に休暇に南朝鮮を訪れた際、朝鮮半島全体に連なる山脈・白頭大幹の存在を知る。以後07年から南側の山脈の登山を本格的に開始。11年と12年には北側の山脈を踏破し、分断後に史上初めて南北朝鮮の白頭大幹を登った人となった。朝鮮半島縦断を通して撮影された写真は、「BAEKDU DAEGAN KOREA:Mountains of North & South Korea」(13年)として写真集にまとめられた。15年には北南両政府の後援を受け、平壌とソウルで巡回展を開いた。

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