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〈朝鮮と日本の詩人 96〉松本千鶴

心の海の無数のいかり われらのこころの海には 無数の碇が沈んでいる。   大小さまざまのたたかいの歴史よ。   波しずかなる日 それらひとつびとつの歴史をしらべよ。 いかにひとり言…

〈朝鮮と日本の詩人 93〉井上光晴

「昨夜も黒人兵が射殺された」 血痕(ちのり)のあとはまだ消えない 昨夜も黒人兵が射殺された ふつ、ふつ、ふつ、ふつ ふつ、ふつ、ふつ、ふつ コンクリートの声をあげて 彼はたえまなく打っているが 汽笛ひ…

〈朝鮮と日本の詩人 92〉瀬木真一

母国語は反抗の武器 親方にどなられると スコップをほおり投げ 仕事をやめて 朝鮮人たちは一カ所にかたまる そして 母国の言葉でさかんにしゃべり出す きっと不平を言いあっているのだろう  

〈朝鮮と日本の詩人 91〉盤城葦彦

いまも許してはいない 一衣帯水の国じゃないか 少しばかり海を隔てているだけだろう 一足飛びで着いてしまうよ 知人は たやすく 安易に言うが (2連12行略)

〈朝鮮と日本の詩人 90〉中村稔

高麗青磁の神秘な青さ 薄命の海をながれる藍よりも さらに淡い器物の青に ひたすらに一日の憂悶を鎖す。   わが祖父たちの奪ったもの、 わが兄弟たちの掠めたもの、 ついに奪いえず、掠めえなかっ…

〈朝鮮と日本の詩人 89〉大岡信

「かくもデブチンになり」 信じられない話だ 長年ヤマトに巣食っていた 貧乏神の大群が 足早に去った春景色 テレビジョンが映し出す 新聞雑誌が報道する もうあたりまえという顔をして  

〈朝鮮と日本の詩人 88〉鹿地亘

死をも恐れぬ強靭な愛国心 おおそれは私を泣かせる、 このわかものを見よ! ぐるぐる巻きに柱にゆわえられ 的のしるしを胸にさげ、 眼かくしの下に、眼に見えぬ天を仰ぎ、 少女のような無心の唇をほころばせ、…