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自分の存在を問い続けた夏/在日コリアン大学生サマーキャンプ2019「マダンSTART」

在日コリアン大学生サマーキャンプ2019「マダンSTART」

留学同の夏行事「在日コリアン大学生サマーキャンプ2019『マダンSTART』」が19~21日にかけて、滋賀・ビラデスト今津で行われた。毎年行われている「マダン」だが、今回のコンセプトは「START」。同胞学生との出会いを通して、新しい自分をスタートさせるという思いからだ。日本各地から集った約200人の参加者らの内、朝鮮学校に一度も通ったことのない日校出身生の割合は4割弱。近年、朝鮮学校出身の参加者らが大半を占めているなか、日々の取り組みが功を成し、例年に比べ10人多い日校出身生たちが参加した。3日間、さまざまな企画を通して参加者たちは、それぞれ「在日コリアン」である自分の価値観を仲間と共有しあった。葛藤と理解の末にそれぞれの「違い」を受け入れ合いながら互いの絆を深めた。

仲間と過ごす格別な時間

キムパプを作りながら親睦を深めた。

3日間のスケジュールは、ウリマルスピーチ、朝鮮舞踊体験やキムチづくりをはじめとする10種の民族文化体験、キムパプ作り、焼肉、肝試しなどの企画や、名前や国籍に関するディベートおよびワークショップ、留学同卒業生らによるトークセッション、班討論など盛りだくさん。悪天候が続くなか、予定の一部変更も余儀なくされたがほとんどの企画が決行された。

文化公演で最優秀賞に輝いた留学同兵庫

中でも3日目に行われた文化公演は大きな盛り上がりを見せた。朝鮮の民謡や舞踊、民族楽器、民話をもとにした演劇など、各地方ごとに用意した演目を披露しあい、審査を行なった。大阪朝鮮歌舞団、京都朝鮮歌舞団による公演も行われた。参加者たちは割れんばかりの拍手と合いの手で会場を盛り上げ、最後は「統一列車」を走らせ一つとなった。

大きく盛り上がった歌舞団公演

熱気に包まれた会場で、「マダン」実行委で留学同九州の田明世さんは「嬉しいのは、日校出身生がたくさん参加したこと。自分もずっと日本学校に通った。民族の歴史や文化を学んだこともなければ、在日の友だちもいなかった。留学同と出会い、『マダン』に参加して、同じ境遇の友だちと出会って人生が変わった」と話す。

もともと「通名」を使っていた田さんだが、留学同を通して在日同胞コミュニティーと触れ合う中で、さらに留学同代表団の一員として昨年、はじめて祖国を訪問しながら「本名宣言」に踏み切った。「留学同の学習会で、私が2つの名前を持っている理由、民族名を使う意義について学んだ。民族名は自分が朝鮮人であることを表明できるもの。何より祖国では、周りも自分も朝鮮人で、自分が日本名を名乗る理由が一切なかった。そのときはじめて自分が朝鮮人であることをしっかりと認識できたし、それでいいんだと思えた」。

文化公演で

差別や偏見のはびこる日本社会の中で朝鮮人として生きることへの「不安や恐れ」、葛藤は大きかったし今でもあると田さん。「そんな中で『本名宣言』に踏み切れたのは、ここで出会った仲間がいたから。私みたいな後輩たちも、『マダン』で多くのことを感じて、考えてほしい」と話した。

何も当たり前でなはい

「なんで在日朝鮮人として生きるの?」

「本名ってそもそも何?」「民族名を名乗るのは日本社会の差別に抵抗すること」「名前はその都度、使い分ければいいと思う」「国籍がどうであれ見た目は変わらないから何でもいいのでは」「朝鮮籍を守りたい」「帰化して何が悪いの?」「自分がどう思うのかが大事」…。

初日のワークショップであげられた意見の一部だ。「在日コリアン」である自分の名前や国籍にはどんな意味があるのか。いろんな背景を持った学生たちの意見は多様だ。

民族文化体験で朝鮮語を学ぶ参加者たち

はじめて「マダン」に参加した留学同西東京の玄知勲さんは日本学校出身。班別討論で「普段、通名を名乗るのは何も、自分が在日コリアンだという事実を隠すためではない。隠す・隠さないという考え自体がなく、通名は当たり前で、ごく普通なもの。自分の国籍や民族名なども、わざわざ人に表明するものではないと思う」と話した。

一方で、留学同東海の南佑京さんは「高級部までずっとウリハッキョに通いながら、本名が当たり前だし、自分が朝鮮民族の一員だという認識でずっと生きてきた」としながら「同じルーツを持って生まれても、育った環境や受けた教育が違うだけで大きな差が生まれる。当たり前なことなど、本当は一つもなかった。そんな中でもなぜ私たちは民族にこだわるのか。互いの思いを擦り合わせながら、皆で、その答えを探していきたい」と話した。

留学同兵庫の金大成さんも「幼稚園から朝高までずっとウリハッキョに通った。本名を名乗って生きることに正しさを見出している」としながら次のように続けた。「そんな自分に、同じ班の日校出身生が『名前が2つあったところで、どっちか決めつけなくて良くない?』『なんで民族的に生きなあかんの?』と質問してきた。ウリハッキョで先に見つけた『当たり前』の中身について、改めて考え直すきっかけになった」。今後の留学同活動を通して、その答えを引き続き探していきたいと笑顔を見せた。

在日コリアン大学生サマーキャンプ2019「マダンSTART」

参加者たちは3日間、常に自分のアイデンティティーについて向き合い、話し合い、夜通し討論を重ね、「自分は何者であるのか」という問いへの答えを探しつづけていた。

在日コリアン大学生サマーキャンプ2019「マダンSTART」

「マダンを通して、同じ在日でも、自分と全くちがう価値観を持って生きている人がいることを知った。自分のルーツについても知ることができた。ここに踏み出した自分は何ができるだろう。もっと、自分のルーツについて、歴史について学びたい」(玄知勲さん)

参加者たちは「マダン」を通して、「在日コリアンである」自分の、新たなスタートを踏み出した。

(李鳳仁)