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〈ヘイトの時代に 4〉選挙活動が差別扇動の場に/「絶対に許さない」、動いた市民たち

2019年04月17日 10:25 主要ニュース

そんな現状を見て、動いた人たちがいた。

3月28日、日本人の弁護士などから成る有志らは、連名で京都府、京都市に対しそれぞれ申し入れを行った。有志らは9日のヘイトデモに対する有効な対応を求めるとともに、今回の選挙において日本第一党が選挙活動を装い人権侵害行為を行う恐れを指摘。府、市に対し、選挙に先立ちそれぞれどのような対応を考えているのか尋ねた。申し入れに参加したメンバーによると、府と市はそれぞれ情報を収集するが「自治体としては対応のしようがない」と返答した。

4月3日、「出町柳」駅で演説する日本第一党候補者(中央奥)に対し、ヘイト反対の意を示す抗議者たち

また、有志らは2日、京都地方法務局に対しても要請を行い、局の対応策を尋ねた。

法務局に対しては、今回の地方統一選挙に先立ち法務省から「選挙運動として行われたからといって、直ちにその言動の違法性が否定されるものではない」と、適切な対応を求める通知が出されている。しかし、京都地方法務局は有志らの要請に対し、「被害者から申告があり、それに対し人権侵犯が認められた場合に然るべき対応をしていく」と返答。事前規制は行わず、事後的な対応を検討しているに過ぎないことが明らかになった。

申し入れを行った元京都府議会議員の角替豊さん(70)は「『解消法』施行後、初めての地方統一選を前にし、法務省が適切な対応を求めたにも関わらず京都の窓口である京都地方法務局は、市民としては頼りにしようがないことが明らかになった」と落胆を示しながら「法務局を含め、ヘイトスピーチに対し毅然とした態度で取り組む日本の行政に変えるために、私たち市民が努力していかなければならない」と指摘した。

選挙を装いヘイトを行おうとする動きに憤りを感じ、申し入れを行ったのは専門家たちだけではなかった。様々な団体や個人が、自分の住む地域がヘイトの現場になるのを防ごうと活動に乗り出した。

「朝鮮学校と民族教育の発展をめざす会・京滋『こっぽんおり』」(以下、「こっぽんおり」)のメンバーである三嶋あゆみさん(38、会社員)もその一人だった。

三嶋さんは「いち市民として、嫌なことは嫌」だと話し、地域で差別扇動が行われることを防ごうと、知り合いの中から有志を集めた。三嶋さんを含む3人の有志らは、3月29日、府および市の窓口を訪ね「違法であるヘイトスピーチを傍観せず、事前規制をしてください」との趣旨で要請を行い、府と市に対し法務省の通達に沿った事前規制を行うことを求めた。

抗議者らは4月4日、一日中銀閣寺周辺の警戒にあたり、抗議の意を示していた

また、三嶋さんを含む4人の「左京区民有志」らは、4月2日、左京区15人の候補者の内、日本第一党を除く14カ所全ての事務所に対し要請活動を行った。それぞれの事務所を回り、選挙演説でヘイトスピーチに反対の姿勢を示すことや、ヘイトスピーチを目撃した場合には選挙管理委員会に通報するよう訴えた。活動は昼に始まり夜の8時過ぎまで及んだ。その結果、要請に応答し4月4日に銀閣寺周辺で「ヘイトスピーチ反対の声を一緒に上げて行きましょう」とスピーチする候補者も現れた。「変化は突然起きるわけではないけど、少しでも何か投げかけたらそれが蓄積され、いつか変化が起きるかもしれない」(三嶋さん)。他の個人、団体からも働きかけは続いた。

選挙から見えた矛盾

そうして迎えた4月3日の午後5時。演説が予定されていた出町柳駅には「朝鮮人差別を許さない」「差別は人を殺す」などの旗やプラカードを持った20人以上の抗議者が集まった。しかし普段のカウンターと違ったのは、デモ側の声をかき消すような怒声や実力を持って演説を中止させるような行為がなかったことだった。抗議者らはそのような行為が公職選挙法における「選挙の自由妨害罪」に当たることを憂慮していた。また、演説者側も選挙活動を装い、直接ヘイトスピーチに該当するような言葉は避けられていた。

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