Facebook

SNSで共有

〈世界フィギュア選手権2019〉世界舞台での再会を夢見て/リョム・デオク選手との歓談

「ISU世界フィギュアスケート選手権大会2019」に参加した朝鮮代表のリョム・デオク、キム・ジュシク選手と、愛知中高の鄭有茄さん(高級部2年)が交流する機会が訪れた。21日、ペア競技のフリースケーティング(FS)を終えた2人を、憧れをにじませながら迎えた鄭さん。幼いころから実兄がアイスホッケーをしていた関係で、スケート場に行く機会が多かったという鄭さんは、初級部4年のころから本格的にフィギュアスケートを始め、一昨年、昨年と2年連続でジュニア全国大会に出場した。そんな彼女が、朝鮮ペアの存在を知ったのは、平昌オリンピックでのエキシビジョンを映像でみたことだった。南の地で、チョゴリの衣装を着て可憐な演技を披露する2人の姿にいつしか憧れを抱き「いつか一目でいいから会ってみたい」という思いを抱いていた矢先、思わぬタイミングでその日がやってきた。

同じチョゴリの衣装

自身の競技映像を見せる鄭有茄さん(右)とリョム・デオク選手

地元・愛知からはるばる会場を訪れ、初めてみた朝鮮ペアの演技に、鄭さんは「選手たちの『やりきろう』という気持ちが伝わってきてとても魅力的だったし、大きな舞台で堂々と演技する姿に惹かれた。他の選手たちに比べてスピード感があって、実力が高いと思った」と感想を述べた。またリョム選手を前に「体は小さくても氷の上での存在感はとても大きかった」と緊張した面持ちで、自身の言葉をやっとの思いで伝えた鄭さんに、リョム選手は温かいまなざしで「コマプスムニダ」とうなずいていた。

その後、リョム選手と鄭さんが談笑。在日同胞のなかに、フィギュアスケートをする学生がいることを今日初めて知ったと話すリョム選手に、携帯電話を取り出し恥ずかし気に自身が演技する映像を見せた鄭さん。その映像のなかには、平昌で朝鮮ペアがみせたのと同じように、チョゴリの衣装を着てリンクを駆け抜ける鄭さんの姿があった。「チョゴリの衣装がとてもかわいいですね。監督は日本の方ですか」「はい、日本人の先生です」「シングルだけ経験してみたの? ペアの経験はある?」「シングルしかやったことはないです」などといった会話が行き交い、和気あいあいとした様子で映像をともに鑑賞した。

少し緊張がほぐれたのか、それからというもの鄭さんは、日頃の練習やトレーニング方法、試合前に緊張を克服する方法などさまざまな質問をリョム選手に投げかけた。

そんな彼女に対し「心配はいりません。ずっと前だけを見て全力で練習や競技に挑めば大丈夫。信念を持って前に進むのは朝鮮人民の精神ではないですか」と笑い和ませるリョム選手は、大会期間に感じた率直な思いをゆっくりと語り始めた。

「競技に臨む前に、各地の朝鮮学校の子どもたちからの応援映像をみて、こんなにも応援してくれるんだと感動した。同胞たちの応援に応えたいという思いとは裏腹に、いつもミスをしないとこでミスをしたり、これほど緊張した競技は初めてだった。氷は冷たくても、同胞たちの『頑張れ』という一言が全身を熱くした。人は背負うものや頑張る原動力があれば何事も力に変えられる」

その他にも、「試合の準備をするとき、どのようなことを重点的にするか」という質問に対し、 「音楽を聴き込むこと、資料学習をすること、そして自分たちの演技を繰り返し分析すること」とリョム選手が答えると、鄭さんは何度もうなずきながら耳を傾けた。

心からのエール

リョム・デオク、キム・ジュシク選手と交流した鄭有茄さん(中央)

これほどリョム選手が親身になるのには理由があった。自身もフィギュアスケートを始めた当初はシングルを経験し、それからペアに転向した経緯をもっていた。そのためか、現在ジュニアシングルで奮闘する鄭さんのことが、他人事には感じられなかったのだろう。

別れの時間が近づくなか、リョム選手は鄭さんに「お願いがある」と自身の思いを語りはじめた。それは、幼いころから長い時間を選手生活に費やしてきたリョム選手の鄭さんに対する心からのエールだった。

「人は信念がなければだめ。 信念があれば何事もやり遂げられる。スポーツというのは決して容易ではないし大変なことももちろんある。そのなかで祖国の尊厳、自らの尊厳を守りながら選手生活を送ってほしい。私は『練習は厳しく、競技は簡単に』という言葉を胸に日々練習にも励んでいる。それほど練習をしてこそ、世界の覇権を握ることができるから。皆が1回練習すれば、私たちは10回練習して世界水準に達するのが最終目標だ。いつかまた会いましょう」

鄭さんは、リョム選手の話をうけて感激した様子で「鄭有茄という名前でスケートを始めて競技成果をあげようと決心したのは、幼い頃からウリハッキョや民族教育が私を育ててくれたからだ。それに対する恩返しをしたいと思った。祖国と自分の尊厳を守ってほしいと言ったリョム・デオク選手の言葉を胸に刻み、同胞社会と祖国の尊厳を守るため、今後も鄭有茄という名で堂々とスケーティングをしていきたい」と目を輝かせた。また、将来はショースケーターとして世界各地をまわりたいと夢を語りながら「誇りを持って選手生活を送るリョム選手をみて、私も必ず夢を叶えたいと思った。まずは2年連続で出場している全国大会に今年も出場して、良い成績をあげたい」と意気込んだ。

この日、鄭さんの様子をほほえましげに眺めていた愛知中高の李英実教員(23)は、「生徒が貴重な機会に恵まれて、改めてスポーツや文化の成す力が大きいことを感じた」としながら「自身の追いかける夢がスケートであることから、今回鄭有茄さんは国家選手と出会うことができたが、これは他の生徒らにも統一時代の主人公としてさまざまな分野で羽ばたく勇気やきっかけを与えると思う」としながら、朝鮮選手団に対し改めて感謝を述べた。

(韓賢珠)

「世界フィギュア選手権2019」関連記事一覧