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朝米が生産的な対話を続けていくための要件

トランプ大統領の課題は「覇権的発想の克服」

ベトナム・ハノイで会談した金正恩委員長とトランプ大統領は「朝鮮半島の非核化と朝米関係の画期的発展のために今後も緊密に連携し、ハノイ首脳会談で議論された問題解決のための生産的な対話を続けていくことにした」(朝鮮中央通信)という。今後、朝米の「生産的な対話」が継続されるためには何よりもその障害となる米国の長年の悪習、時代錯誤の覇権的発想が克服されなければならない。

「一方的譲歩」に対する「見返り」

朝米双方は対等な立場で対話に臨んでいる。米国がこの事実を無視し、朝鮮が自分たちの要求に従えば「見返り」を与えるという横暴な論理、自分本位なディールに固執すれば問題解決は遠のくばかりだ。

2回目の朝米首脳会談が合意に至らずに終わると朝鮮に敵意を抱く強硬派がこの機を逃すまいとメディアに登場し、朝米交渉に関する無謀な要求を吹聴している。2002年、ブッシュ政権が朝米基本合意文(1994年)を破棄する過程を主導した「超タカ派のネオコン」、ジョン・ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官は「(朝鮮が)弾道ミサイル、生物化学兵器を含む完全な非核化を約束すれば経済発展の展望がある」と述べ、「ビッグディールがトランプ大統領の意向」だと喧伝している。

ハノイ首脳会談のための実務交渉を担当したスティーブ・ビ―ガン国務省対朝鮮特別代表も強硬派の主張にすり寄っている。「私たちが求めるのは核燃料サイクルのすべての領域の除去」、「すべてが合意されるまではいかなる合意もない」と発言、朝鮮側が今回の会談で提案した寧辺核施設の完全廃棄を「限られた非核化措置」と断定し、朝鮮側に「さらなる譲歩」を求めている。

唯我独尊に陥り、相手に何でも要求できると錯覚した覇権主義者たちが今後も主導権を握れば、朝米対話は挫折を免れない。朝米双方が核保有国の対等な立場で平和の問題、非核化問題の解決に取り組むことを確固たる交渉原則とする朝鮮は原則に反する強圧的な要求を断固拒絶するはずだ。朝鮮側は最高指導者の決断に従い、平和と非核化に向けた米国の行動に相応する措置をとり続ける覚悟と準備が出来ている。しかし強者と弱者、勝者と敗者を区別するように不公正な要求を突きつけ、屈従を強制する傲慢と独善は絶対に許さない。

終わらない軍事対決

核戦争威嚇と制裁圧力によって朝鮮の自衛的核抑止力放棄を実現しようとした米国の企てが覇権的発想であるならば、自らは核戦争威嚇を続けながら「経済的見返り」を与えることで朝鮮の核と弾道ミサイルの廃棄を引き出せると考えるのもまた覇権的発想である。

米国本土への核報復能力を完成させた時点で朝鮮は「朝鮮半島の完全な非核化」の意志を表明し、その実践のための準備に着手した。当然ながらこれは米国が相応の行動措置をとることを前提としている。朝鮮を核と弾道ミサイル開発に突き進ませた原因である米国の朝鮮敵視政策の転換と対決政策に基づく核戦争威嚇の除去が目標だ。朝鮮にとって非核化とは米国の誤った思考と行動を改めさせるプロセス、「世界最大の核保有国」が朝鮮に適用しようとした覇権主義に終止符を打つための選択だといえる。

米国の衰退が進む中、「アメリカファースト」を標榜して登場したトランプ大統領は、朝鮮半島の軍事的対立と核戦争危機によって利権を得てきた覇権主義者たちの反対を押し切り史上初となる朝米首脳会談の開催を決め、「新たな朝米関係の樹立」、「朝鮮半島における平和体制構築のための共同努力」が明記されたシンガポール共同声明に署名した。米国の現職大統領が朝鮮の最高指導者に70年にわたり続いてきた敵視政策の放棄を約束した瞬間であった。

しかし、その約束はまだ実践されていない。ハノイ首脳会談でシンガポール共同声明履行のための行動措置は合意されなかった。その4日後には「キー・リゾルブ」の名称を「同盟」に変えた米・南合同軍事演習が始まった。 「フォールイーグル」合同軍事演習もその名称をなくして大隊級以下の小規模野外機動訓練方法で年中随時繰り広げられることが公表された。朝鮮をねらった軍事演習を中止するというトランプ大統領の約束とは異なり、朝鮮を核戦争抑止力の獲得という決断に至らしめた米国との軍事対決は今も終わらず続いている。

ハノイ首脳会談後の記者会見で朝鮮側は国連制裁の一部を解除すれば寧辺核施設を完全廃棄できるという提案は現在の朝米間の信頼水準において朝鮮が講じることが出来る最大限の非核化措置だと指摘、これを受け入れない「米国式の計算法」を批判した。(連合ニュース)

 公正な提案、真摯な交渉

ハノイ首脳会談で朝鮮側は寧辺核施設の完全廃棄に対する米国の相応措置として、敵視政策転換の始まりと見なすことが出来る国連制裁の一部解除を提案した。これは軍産複合体の意向に逆らって朝米協力の新時代を切り開くことを約束したトランプ大統領が、現段階で米国の核戦争威嚇を除去する軍事分野の措置に着手することが難しいであろうと判断し寛容を施したのであって、不動産売買をするように経済的対価を受け取り核戦争抑止力を放棄するという提案ではない。

朝鮮の非核化措置に相応した米国の非核化措置、朝鮮の安全を担保する軍事的措置について考えたこともない覇権主義者たちがしゃしゃり出て「寧辺+α」、「核と弾道ミサイル放棄」の一方的要求を掲げ 「一括妥結」、「ビッグディール」を主張する限り「生産的な対話」は成立しない。むしろ膠着局面が続き、朝鮮と米国の軍事的対立構図が浮き彫りになるだけだ。結局はトランプ大統領の心構えと決断にかかっている。金正恩委員長への「変わらぬ信頼」を表明する大統領が相互尊重の原則で公正な提案を準備し真摯な姿勢で問題解決に臨むとき、朝米両国は非核化に向けた大きな一歩を踏み出すことができる。

(金志永)