Facebook

SNSで共有

〈ルポ・南社会に芽生える変化(上)〉分断を超え、統一の灯を/民族和合に立ち上がる市民たち

【ソウル発=李永徳】3度の北南首脳会談が行われた2018年、両国首脳の強い意志によって民族和合と信頼醸成のプロセスが示される中、南でも民族自主の精神で新たな時代を手繰り寄せようと各階層の市民たちが立ち上がっている。12月初旬、南のインターネットメディア「民プラス」、朝鮮6.15編集社、朝鮮新報社が主管する北・南・海外共同写真展「平壌が来る」の取材でソウルに入り、社会のうねりを肌で感じた。

あの頃の夢と理想

「蘆原市民歓迎団」が主催する「平和統一のど自慢」には離散家族の姿も。

12月2日、ソウル特別市北東部の蘆原区では「平和統一のど自慢」が行われていた。金正恩委員長のソウル訪問を歓迎する「蘆原市民歓迎団」が主催した同行事。当日は20組が出場し、それぞれの思いを歌にこめた。

出演者の中には離散家族の女性がいた。舞台で弾き語りを披露した李愛慶さん(57)の母は1945年の解放後、混乱のさなかに19歳で家族と離ればなれに。その後、故郷である開城の地を踏めず、家族への恋しさを胸にしまいながら他界したという。

大国が持ち込んだ「分断」は民族の運命を引き裂き、北と南が敵対する構造を生み出した。反共・反北教育によって憎悪が増大。偏向的なメディアは先入観を植え付けた。「平壌では十分に食べられず、落ちぶれた生活が広がっているはず」。京畿道富川市に住む女性は今回の写真展に足を運ぶまで、そう思いこんでいた

6.15時代には統一機運が一気に高まった。写真は6.15共同宣言発表4周年を記念した北南芸術公演のワンシーン。

2000年6月、分断史上初となる北南首脳会談が行われて以降は朝鮮半島で一気に緊張緩和と和解のムードが沸き起こる。財団法人「平和の道」のキム・ジョンウク事務局長(46)は当時「南北の平和統一を目指して、同世代の青年たちと運動に身を投じた」者の一人。実際にソウルで出会った40、50代に青春時代について聞くと「あの頃は夢と理想を抱いていた」と口を揃えていた

2008年から約9年続いた保守政権のもと北南関係は凍りつき、各方面での交流が途絶えた。言論分野も例外ではなかった。6.15南側委員会言論本部(2005年6月結成)のチョン・イルヨン共同常任代表(聯合ニュース統一言論研究所長)は、李明博政権期に北側からの接触要請に応じられなかったと省み、「言論交流が塞がれていて南北が平和共存し、統一へと向かうことができるか」と心境を吐露する。

社会に蔓延する閉塞感によって「夢と理想」はいつしか心底に沈んでいった。

もう一度この手で

数多くの市民たちが凍てつく寒さの中でキャンドルを持ち「弾劾」を叫んだ(写真=連合ニュース)

保守政権に対する不信感は、しかし、大きなうねりとなって表層に表れる。2016年の冬、積りに積もった積弊を一掃しようと数多くの市民がキャンドルを持って立ち上がったのだ。「忘れかけていた思い」に再び火が灯った。

今年4月、11年ぶりに手を取り合い、新たな平和時代の幕開けを宣言した北南首脳の姿は、統一への希求をさらに燃え上がらせ、凝り固まった「反北イデオロギー」をも溶かしていく。

兵役中に北に対する敵愾心を抱いていたというソウル大学の学生(24)は、南の柔道代表として出場した国際大会で出会った北側選手を思い出し「当時交流を持てなかったことに悔やみを感じた」と。また釜山の区議会議員によると、釜山市南端の影島区は「老人が多く住む保守的な地域だが、首脳会談後には統一を反対する人が本当に減った」という。

写真展に訪れた40代の男性は、現政権下で生まれた民族和解の兆しを「もう二度と逃してはならない」と、自分に言い聞かせるように語っていた。

大田では各界層80団体で歓迎委員会構成された。(写真提供=同歓迎委員会)

9月に行われた今年3度目の北南首脳会談を機に、金正恩委員長のソウル訪問を歓迎する機運が各地で高まっている。街中にはためく統一旗や横断幕、各所に飾られた歓迎メッセージ付きのハガキ、それに冒頭で言及したような文化行事まで。

「南北首脳が約束を履行しているのだから、民間でも南北が互いに歩み寄らないといけない」とは「蘆原市民歓迎団」のカン・ミギョン団長(38)の言葉だ。数年前まで「統一」を声高に叫ぶことすら憚られていたが、あの日のように、市民たちは自らの手で歴史を動かそうととしている。

「新しく開かれている平和と統一時代の主人公になるために、もう一度平和のキャンドルを、統一のキャンドルを掲げよう」。11月29日に結成された「ソウル地域歓迎委員会」の宣言文は、市民社会、労働組合、政党、宗教など各階層146団体の心の叫びを代弁している。

北・南・海外共同写真展は反響を呼び、各地での開催が続いている

訪問期間、本社代表団が訪ねた各階層の名だたる人士たちは、総じて写真展の開催を歓迎し、北と南、そして海外の同胞がともに手を携えていくことが大事だと口にした。長年に渡って断絶した民族が歩み寄ろうとする時、双方の立ち位置を知る我々、在日同胞だからこそ成しえる役割がある。

あるソウルの大学生が「私たちは一つの民族である」と気づくことができた場所こそが、北と南、そして在日同胞が設けた写真展だったのだから。

(朝鮮新報)

関連記事

〈ルポ・南社会に芽生える変化(下)〉分断と統一が交差する、変わりゆく地/非武装地帯を訪ねて