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〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 7〉朝鮮戦争と日本文学③井上光晴/原罪・責任としての「朝鮮」に向き合う

2018年10月23日 09:00 主要ニュース 文化・歴史

朝鮮高校2年生の日本語教科書に収録されている「ぺいうぉん上等兵」

日本文学と朝鮮、とりわけ朝鮮戦争とのかかわりについて述べようとするとき、井上光晴を取り上げないではすまされないだろう。井上の文学における「炭鉱」「天皇制」「戦争」「原爆」「共産党」といった原体験には、これらとともに朝鮮・朝鮮人体験がつらぬかれており、彼は文学形成期における作品のほとんどに朝鮮を描いてきた。

磯貝治良は「井上光晴は、いわゆる第一次戦後派作家たちがほとんど描くことなくきた〈朝鮮〉を、その空白を埋めるようにして、自らの母斑として、描きつづけてきた」と述べる。日本の「戦後」が見落とし、省みようとしなかった〈朝鮮〉に対する日本の原罪を自己剔抉(じこてっけつ)しようと試み続けた作家である。そしてまた、朝鮮戦争に向き合った文学作品の少なさのなかで、井上の小説舞台の土壌そのものである長崎、佐世保港から眺めていた朝鮮戦争は、彼にとって決して対岸の火事ではなかった。

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