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〈くらしの周辺〉時代と朝鮮籍と海外生活(3)/金賢

2018年10月10日 16:29 コラム

マネーロンダリングを理由とした国連制裁のため、DPRKパスポート保持者が海外で銀行口座開設ができないことについては前回までの話の通りである。

残りの銀行をすべてまわり、可能性のある銀行を探した。その中でただ一つ、外資系銀行で私が日本で口座を開いていた銀行があった。日本での口座カードを見せ、部長を呼び、口座開設を訴えた。内部での協議の結果、在日であるという例外的な扱いと、日本に同銀行に口座を持っていたことから、口座の開設が可能となった。その銀行の人が見せてくれたスクリーンにDPRK、イラク、イランがリストアップされていた。マネーロンダリングを理由にした制裁はその他にもあった。アメリカの保険会社、仲介会社から生命保険、医療保険を買うことができなかった。米国独自の制裁だという。医療費の高いシンガポールで無保険状態は死活問題である。

シンガポールは国連の制裁決議を受け入れ、遵守する国であるということが確認できた。決議の履行は国家に委ねられているからだ。

2017年8月、ある会社から面接の連絡が入った。僕にとってより興味のわくエリアだったこと、給与もよりよかったことから転職を決めた。元いた会社に退職届を提出し、就業開始手続きが始まった。その頃、朝米関係が極度に悪化し、その年だけで新たな国連制裁が3つ決議された。この制裁が私のシンガポール生活に終止符を打つことになる。(つづく)

(東京都在住、エンジニア)

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