Facebook

SNSで共有

〈くらしの周辺〉時代と朝鮮籍と海外生活(2)/金賢

就労ビザが付与され、無事に働きはじめて1週目、会社の人事部から銀行口座番号を通知するようにと言われ、口座を開設しに行った。驚くことに、学生生活の2年間は収入がなかったため、銀行口座なしで乗りきったのだ。

シンガポールで一番大きな銀行の店頭で口座を開こうとし、パスポートを渡した瞬間、行員の顔が疑問に満ちた顔になっていった。「少々お待ちください」―パソコンで何やら調べはじめた。すぐに、「申し訳ございません。あなたの国籍では口座は開けません」。私は「なぜですか」と聞き返した。「お答えできません」と返ってきた。その後、いくつもの銀行を回ったがみなそのような不毛な回答だった。

人事部の担当者も驚きを隠せず、すべての銀行で口座開設が不可能なら、開設が可能な国への転勤も考慮するという。

銀行で働いていた友人に事情を話したところ、口座開設ができない理由は国連のDPRKに対する経済制裁であった。DPRKパスポート保持者はマネーロンダリングの疑いがあるため、銀行口座開設をさせないというものだ。友人によると、秘密裏に口座を開設すると、銀行側がMAS(シンガポール金融省)より営業ライセンス停止、はく奪される可能性があるという。

人生で国連制裁を初めて受けた経験だった。以降、シンガポール中の全銀行を一つ一つまわり、交渉することになる。(つづく)

(東京都在住、エンジニア)