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【寄稿】自強力第一主義と科学技術/任正爀

2017年11月16日 09:00 共和国

党7回大会以降の成果について

現在、朝鮮では朝鮮労働党第7回大会(2016年5月)で示された大綱に従い、自強力第一主義を掲げ社会主義強国建設にまい進している。自強力とは、「自分で自分を強くする力、自分の力で前途を切り開いていく力」のことであり、自強力第一主義とは「自分の力と技術、資源に基づいて主体的力量を強化し、将来を切り開く革命精神」のことである。金正恩委員長による「2017年新年の辞」に「自力自強の威力はすなわち科学技術の威力」とあるように、その核心は科学技術である。党7回大会から一年以上が過ぎたが、この間どのような科学技術的展開があったのか、筆者が知るところを簡単に整理してみたい。

平壌にそびえる科学技術殿堂(朝鮮中央通信)

国防・宇宙科学の発展

まず、最初に挙げなければならないのは、多くの人が思い浮かべるように水素爆弾実験と大陸間弾道ロケット(ICBM)試射の成功である。これまで朝鮮では6回の核実験を行ったが、特に水素爆弾実験は米国をはじめとする敵対勢力に衝撃を与えた。ロケット開発では中距離の「火星12」型、米本土を射程に収めるICBM「火星14」型の試射を終え、次はいよいよ最終型といわれる「火星13」型である。国防科学院化学材料研究所における大気圏再突入に耐えるICBM先端部分と固体燃料ロケットエンジンの噴射口の製作などに用いられる炭素複合材料の研究開発は、まさにそれを現実のものとしている。

このような朝鮮の動きに対し敵対勢力は「挑発行為」と騒ぎ立てるが、米国による朝鮮への核威嚇・軍事演習こそが挑発行為であり、朝鮮戦争の停戦協定を終戦協定に替え、米国と平和協定を結ぶという朝鮮の戦略目標の正当性は明らかである。この問題に関する日本政府の対応は滑稽極まりないが、そこには国内の米軍基地問題に関しては何の発言力もない自分たちとは対照的に、米国に堂々と物申す朝鮮へのコンプレックスが作用しているのだろう。

さて、前述の国防科学と密接な関係があるのが宇宙科学であるが、その中心は「ピョルピッ計画」と呼ばれる「光明星」号の打ち上げである。「苦難の行軍」に終止符を打ち実質的な社会主義強国建設への号砲となった1998年の第1号から4回打ち上げに成功している。とくに3号・4号は極軌道実用衛星であるが、すでに静止衛星運搬用ロケット高出力エンジンの地上噴出実験に成功したと報じられており、次の目標は静止衛星である。

昨年2月に打ち上げられた「光明星4」号(写真はいずれも朝鮮中央通信)

科学者らの活躍

自力による衛星打ち上げは世界9番目の快挙であるが、それを実現させるためにどのような科学者が奮闘したのだろうか? 金日成総合大学理論物理講座長で軌道計算などの理論グループを率いる徐相国博士、金属工学の第一人者でロケットボディの材料となるチタン合金を独自に開発した楊王福博士については知っていたのだが、最近、新たに二人の科学者の存在を知った。

「リ・ジェソップ、金日成賞授賞者・院士・教授・人民科学者。彼は人工地球衛星『光明星1』号発射の成功に貢献したわが国宇宙科学分野の最初の世代の代表者である」。労働新聞16年7月13日付政論「朝鮮の科学者」の一節であるが、それに続く次のような文章を読んで、思わずうなってしまった。

「リ・ソンホ、彼はすでに30代で労働英雄称号を授与され、科学分野における功績により共和国英雄称号を授与された二重英雄である。また、彼は人工地球衛星『光明星2』号発射と極軌道実用衛星である『光明星3』号2号機発射成功に寄与した新世代科学者の一人である。わが党の懐で永生の丘に共にある彼らは父子である」

共和国英雄は命を賭けて功勲を打ち立てた人に贈られる称号で、「永生の丘」とは大きな功績を残した人たちが眠る愛国烈士陵のことである。科学実験には常に失敗の可能性がつきまとうが、国防科学や宇宙科学などの巨大科学の場合にはそれが大惨事につながることもある。そのような突発的な事故を未然に防ぎ、自身は帰らぬ人となった、それがリ・ソンホ英雄ではないか。

17年5月29日付労働新聞社説「国防科学戦士たちのように決死戦を繰り広げ、科学技術大戦において勝利者となろう」における「科学技術決死戦、まさにこれが党の科学技術重視思想を生命線として捉え、党と革命、祖国と人民のために青春も幸福も惜しげもなく捧げ、命までもためらうことなく投じるわが国防科学者たちの歴史的総括である」という文章が筆者の推測を裏付ける。現在の朝米全面対決はしばしば「銃声なき戦争」といわれるが、国防分野に限らず科学者たちは一戦士としての覚悟をもって自己の使命を果たしているのだろう。自強力第一主義の真髄がまさにここにある。

さて、国防科学・宇宙科学の他、経済分野でも多様な科学技術的成果が報告されている。科学化・工業化・集約化が実現した朝鮮人民軍122号養苗場、順川化学連合企業所のアクリル系塗料生産、白頭山英雄青年発電所の5心円2重曲率アーチダム設計、さらに量子暗号通信技術の開発、地下超塩水による塩生産、分散型操縦設備「ミレ102」の開発、3D印刷と螺旋式脳CT設備などなど。

党7回大会では科学技術強国建設を重要課題とし最先端突破戦を呼びかけたが、今後も輝かしい科学技術的成果が得られることだろう。まずは、来年、共和国創建70周年に向けて、ちょうど20年前の「光明星1」号打ち上げのような祝砲を見たいものである。

(朝鮮大学校理工学部教授)

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