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「メチャクチャな虐殺否定論」/小池都知事の追悼文取り消しや発言

2017年10月05日 16:25 主要ニュース 歴史

日本による朝鮮に対する植民地支配解放から70余年。しかし、日本社会を再び危うい空気が覆っている。被害の真相究明や被害者の尊厳の回復はおろか、安倍政権下、日本の加害の歴史を歪曲、隠ぺいする動きが拡がりを見せている。そんな中、東京都の小池都知事は東京都墨田区の都立横網町公園で開かれてきた「関東大震災94周年 朝鮮人犠牲者追悼式典」に追悼辞の送付を取りやめた。そればかりか、同知事は、会見で、「民族差別という観点というよりは、災害の被害、さまざまな被害によって亡くなられた方々に対しての慰霊をしていくべきだ」(8月25日)とも述べた。

中島岳志・東工大教授が鋭く指摘するように「これは巧妙な歴史修正主義である。関東大震災で朝鮮人虐殺が起きたことは紛れもない事実である」(東京新聞9月25日付「論壇時評」)であり、「『震災の犠牲者すべてを追悼する』という一見中立的・公平にみえる言説が、朝鮮人に対する暴力を隠蔽する」(映画監督・想田和弘さんのツイッター)ものだからだ。

9月30日、東京・水道橋で開かれた「関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任を問う会」主催の学習会で講演した、ノンフィクション「九月、東京の路上で 1923年関東大震災 ジェノサイドの残響」(2014年刊行)の著者、加藤直樹さんは「虐殺の事実を否定することは、未来の虐殺を準備することになる」と警告する。加藤さんは関東大震災時の朝鮮人虐殺の事実関係を巡る認識を問われ「歴史家がひもとくもの」と明言を避けた小池都知事の姿勢は、「メチャクチャな虐殺否定論」であると指摘し、朝鮮民族を見下し、それをナショナリズム高揚のエンジンにすることで煽っていく、その先にあるのは「虐殺」であると断じた。

「関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任を問う会」主催の学習会

そして、加藤さんは著名な演出家であった故千田是也さんをはじめ600人の個人、250の民間団体の犠牲者らへの深い思いによって73年に建立された追悼碑を守るためにも、そうした歴史的事実の掘り起こしや平和への営みを広く知らせていく努力を通じて、都合の悪い過去を否認し、葬り去る歴史観の跋扈を許してはならないと訴えた。

続いて登壇した金哲秀・朝大朝鮮問題研究センター副センター長は、ヘイトスピーチや「虐殺否定論」の背景に非正常な朝・日関係があると指摘、9.17朝・日平壌宣言に基づく関係改善の必要性について述べた。

この日、学習会参加者の名で小池知事に対する抗議の決議を田中正敬・専修大学教授が朗読。決議は朝鮮人虐殺は「歴史認識」の問題ではなく、他民族に対する加害という「歴史の事実」である。「認識」などという言葉で、虐殺の有無を曖昧にしたり正当化論を認める余地はない、としたうえで「人々の声に耳を傾け、これまでの東京都知事が行ってきた追悼の精神に立ち返って、再び追悼の辞を寄せるよう」強く要求した。

(朴日粉)

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