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【投稿】朝鮮から日本が見える/森本忠紀

2017年07月25日 09:57 主要ニュース

“人間がシンプルになった気がします朝鮮旅行三度重ねて”

3回目の訪朝を果たした筆者(右から3番目)

バスの窓から朝夕通勤する平壌の人々を眺めていて、「どんな仕事が待っているんですか?」「今日の仕事はいかがですか?」と語りかけている自分に気がついた。窓の外がほんの一瞬の間に過ぎ去っていく。すると何の面識もなく、二度と会えない人たちを懐かしいと感じる自分がいることに気づく。それは平壌の人たちは互いを懐かしく感じる心を抱いて日々暮らしているということに他ならない。

日本ではそんな感情とは無縁なように思うけれど…。平壌に来て、そんな感情がどうして芽生えるのか。

日本の通勤風景は奴隷の鎖にきつく縛り付けられて抵抗を諦めた人々の印象が強くある。去年も同じような光景に接して、「平壌の街の息吹は朝な夕な歩く速さで歩く人々」と詠んだが、歩く速さ=自分のテンポで歩く人たちを見ているとホッとするものがある。朝鮮には残業という言葉すらないと教わった。

歩く人/たむろする人/語る人/なぜに懐かし/平壌の街

 

真新しい壮麗なビルが建ち並ぶ黎明通り。その中で一番高いビルが70階建てで、大学の先生たちが入るマンションだそうだ。外観も素晴らしいが、一戸200平方メートルという広さ、さらに家賃無料ということに驚かされた。

それだけではない。着工から完成まで一年かからなかったという。去年の秋に東北部が水害に見舞われ、一時工事を中断して復旧作業に駆けつけ、復旧後に工事を再開したそうだ。

建物を建てて経済発展を推進すること、自然災害の被災地に赴き復興支援すること、米国の軍事侵略・脅迫に立ち向かうこと、どれもが己が民族を愛し、国の発展に貢献するという確かな目的意識と強い使命感が貫かれている。

日本の場合はどうか。震災復興支援で活躍して喜ばれることと、駆けつけ警護でスーダンへ出兵することとの間に意識のどのような統一があるというのか。

日本を発つとき、国中が危機感の絶頂だったが、平壌へ着くと普段通りのきわめて穏やかで落ち着いた暮らしが営まれていた。

5月1日メーデーの日、家族や地域、職場、友だちなど銘々が行楽の地に出かけて宴を広げ、輪になって歌い踊って遊ぶ。牡丹峰はそんな宴の最高の場所だった。牡丹峰は大きな丘陵だが、そのどの場をも蔽い尽し人々の宴が繰り広げられていた。その光景は見ているだけで楽しく、つられて踊り出さずにいられない。すると、喜んで踊りの輪に入れてくれた。分け隔てなく開放的なこと。日朝友好親善の証と朝鮮旅行ハイライトの一つとなった。

この時、若い頃に観た映画「ローマの休日」が脳裏に浮かんだ。私を虜にしたあの映画の魅力は何だったのか。何でも欧米のものが良しとする欧米コンプレックスのなせる業だったのではないだろうか。「柳京の休日」が「ローマの休日」の幻を打ち砕いてくれたということかも知れない。そんな感懐から一首生まれた。

柳京の/休日を見て/銀幕の/「ローマの休日」/色褪せたるか

 

朝鮮へ行くと言えば、「行けるの?」とか「無事帰ってこれるの?」とか聞かれた。今にも戦争が始まるくらいに日本で大騒ぎされた朝鮮の「危機的状況」がいかに根拠のないでっち上げの虚構であったか。それにしてもありののままの朝鮮をなぜ日本のメディアは報道しないのか不思議でならない。

「平壌は発展しているかもしれないが、農村部は疲弊してるんじゃないの?」。日本の人々からよく出る質問だ。

将泉野菜農場を訪れたら、ありとあらゆる施設、環境、システムが揃えられていた。

まず、学校・保育所、病院が大きな建物として目についた。それから村の真ん中に立派な会館、会議や観劇などに利用される650席のホールがある。また大学とコンピューターで繋がっていて野菜の種や栽培法を研究する研究所がある。この農場で育ったキューリをみんな食べさせてもらったが、そのみずみずしくおいしかったこと。ここで働く人の住まいもどうぞどうぞと招かれて見させてもらった。健康で明るい日々の暮らしぶりが想像できた。

聞けばこの農場を作り上げるのに金日成主席は16回訪問したそうだ。なるほど、ここで働く人々と国家の最高指導者が共同で練り上げ作り上げた創造の産物がこの農場ということなのだ。朝鮮の人々が「偉大な」という言葉をつけて敬愛する理由が初めて分かった気がした。

同じような温室や会館ができても日本ではそれはすべて資本によって作ら、利用する側は消費者ということになる。消費者は主人ではなく、主人はお金だ。

朝鮮では人間がすべてのことの主人である。朝鮮へ来れば誰でも容易くこのことが学習できるだろう。と言っても、私は三度訪れてようやく理解できたのだが。

朝鮮からは日本がよく見える。

今の日本は安倍政権の戦争推進政策にズルズルと引き込まれ、在日朝鮮・韓国の人たちへの過酷な差別政策にも無関心な人が大多数だ。日本はこんなところから大きく変わらなければと思っている。

(「ハッキョ支援ネットワーク・なら」幹事)

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