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〈朝米核ミサイル危機の行方(上)〉核武装の目的は「対決に終止符」

2017年06月14日 16:20 朝鮮半島

半世紀以上続く戦争の最終局面

4月15日の金日成主席生誕105周年慶祝閲兵式には精密化、多種化された弾道ロケットが登場した。(朝鮮中央通信)

ICBM迎撃実験の意味

米国防総省ミサイル防衛局(MDA)は5月30日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の迎撃実験を初めて行った。カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から発射した迎撃ミサイルが、西太平洋のマーシャル諸島クワジェリン環礁から発射されたICBMの模擬弾を撃ち落とした。MDA局長は「この迎撃システムは、本土防衛に不可欠なほど重要なもの」であり、「現実的な脅威に対する有効な抑止力を保有していることが実験によって明示された」と表明した。

「北朝鮮の脅威」を口実にした米国初となるICBM迎撃実験は、朝米対決が過去とは異なるステージに突入していることを示している。米国は、朝鮮の弾道ロケットが米国本土を射程圏に収める事態を想定せざるを得なくなった。

弾道ロケットの運用を担う朝鮮人民軍戦略軍の代弁人は、米国のICBM迎撃実験は「重大な軍事的挑発行為」だと非難、「朝鮮に対して核攻撃を行い、それに対する我が軍の核報復攻撃を防ごうとする米国の軍事的動向は、朝鮮を標的にした核戦争準備が最終段階に達した」ことを意味すると指摘した。そして、実験が成功し、迎撃システムの性能が実証されたと米国が騒ぎ立てるのは虚勢に過ぎないとし、「迎撃ミサイルなどで空から降り注ぐわが戦略軍の『核弾頭の雨』(同時に大量発射する「飽和攻撃」)を防げると考えるなら、これほど大きな誤算はない」と警告した。

2013年春、米南合同軍事演習中の核戦争威嚇が危険な一線を越えたことがある。「米国と総決算する時がきた」との判断から金正恩委員長が戦略ロケット軍(当時)の攻撃計画を最終批准、部隊が戦闘態勢に入り、一触即発の事態となった。当時は、オバマ政権が予定されていた米国のICBMミニットマン3の発射実験を取りやめることで「紛争を望まない」というメッセージを朝鮮に送り、事態の収拾を図った。

トランプ政権には、オバマ政権のように「軍事的譲歩」を見せて危機を先送りする「余裕」はないようだ。驚異的なスピードで進化する朝鮮の弾道ミサイルに対抗するように、就任以来、ミニットマン3の発射実験を繰り返している。ICBM迎撃実験は今後も続けるという。

強力なリーダーシップ

トランプ大統領は、軍事的威嚇と経済制裁の強化によって、朝鮮の核実験と弾道ロケット試験発射を中断させると豪語した。しかし朝鮮は躊躇することなく米国を標的とする核攻撃能力の向上を表明している。実際のところ、米国が朝鮮を圧迫するのではなく、米国が朝鮮から圧迫を受ける構図になっている。

熾烈を極める朝鮮の対米攻勢は、金正恩委員長のリーダーシップによるものだ。

13年3月、米国による核戦争騒動の最中、朝鮮労働党中央委員会の全員会議が招集され、経済建設と核武力建設の並進路線が採択された。新たな路線に沿って核戦争抑止力の強化に拍車がかかる一方、米国に対して南との合同軍事演習を臨時中止すれば、核実験を臨時中止するという提案がなされた。国連総会の演説などを通じて停戦協定に替わる平和協定の締結も求めた。

「戦略的忍耐」を標榜するオバマ政権は、朝鮮の提案に応えず、従来の強硬策に固執した。それに対して朝鮮では2016年、任期末のオバマ政権を見限るように、米国との最終決戦に向けた軍力強化策が講じられた。1月の水爆実験に始まり、中長距離弾道ロケット(IRBM)、潜水艦発射弾道ロケット(SLBM)の試射、そして9月の核弾頭爆発実験に至るまで、朝鮮の核戦争抑止力を示威する措置が続いた。それらすべてを金正恩委員長が直接指導した。

米国は朝鮮の自衛的措置に対する非難と制裁強化をくり返したが、時すでに遅かった。「核武装した朝鮮」は、現実のものとなった。11月の米大統領選挙ではトランプ氏が当選、任期最後の日、オバマ大統領はトランプ当選者をホワイトハウスに迎え入れ、朝鮮が「米国の国家安全保障上の最大の脅威」であるという自らの見解を伝えたという。

そして17年1月、金正恩委員長は新年の辞でICBM試射の準備が最終段階にあると宣言した。それは、長年の敵対国、米国への最後通牒であった。当時、大統領就任前のトランプ氏は、ツイッターで「そんなことは起こらない」との反応を見せたが、就任後は朝鮮の弾道ロケット試射が続く現実を無視することができず、ICBMを想定した迎撃実験を始めるようになった。

いまだ続く交戦状態

中国、ロシアも核武装し、ICBMを保有しているが、米国には、これらの国々と戦争しなければならない切迫した理由がない。ところが、朝鮮と米国は停戦体制下に置かれ、国際法的には交戦関係にある。不測の事態が起きても、双方のICBMを制御するシステムは存在しない。

現在の朝米核ミサイル危機は、1950年に勃発した朝鮮戦争の延長線上にある。朝鮮の核武装も、停戦から半世紀以上続く、米国の核戦争威嚇に起因する。

そして米国を標的にした朝鮮の核攻撃能力の強化は、朝米対決に終止符を打つことに目的がある。金正恩委員長は、米国が「正しい判断をする時まで」、高度に精密化、多種化された核兵器と弾道ロケットの製造を続け、必要な実験を行うと明言している。

米国だけが核とミサイルを持ち、朝鮮を恫喝した時代は終わった。トランプ政権は、ICBM迎撃実験の対象となった朝鮮との交戦状態を続けるか否かを決めなければならない立場にある。米国の国家安全保障上の重大問題であり、無責任な先送りはできない。その判断が下される時、朝米対決の最後のページがめくられることになる。

(金志永)

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