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〈それぞれの四季〉「太い鮮人」/李イスル

2016年10月13日 11:53 コラム

「밥먹었나, 많이 먹어라(ごはんは食べたか、沢山食べなさい)」。

チョソンサラムであれば誰もが耳にしたことのあることばだろう。もはやアンニョンハセヨ同様「こんにちは」と訳しても良いのではと思うのだが、これはきっと食べるのが苦しかった時代にお互いを気遣いあったあいさつの名残りなのだろう。

モイムで支部に行ったり行事のお手伝いをすると、一人暮らしの私を気遣って、いつもたんとお土産を持たせてくれる。ナムルやお肉、色々なチャン。単純に食費が浮くだけでなく、料理のバラエティも増えるので本当に助かっている。時代は違えど、「밥먹었나」の気遣いに生かされていることをひしひしと感じる。

「太い鮮人(ふていせんじん)」ということばをご存知だろうか。朴烈が発行していた雑誌のタイトルで、差別語である「不逞鮮人」に「かけた」ことばだそうだ。日本に対してとことん不逞であろう、という意味合いだろう。

食べることは生きることだ。栄養を摂取するという意味だけでなく、食事を共にし人との仲を深めることが生きる力につながる。「밥먹었나」の気遣いをたらふく食べ、色んな人と食事を共にすることで、私も立派な「太い鮮人」になりたいと思う。

(神奈川県在住、法律事務所事務員)

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