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開城・霊通寺巡礼日本代表団の平和の祈り

2015年12月02日 13:41 朝鮮半島

「心の扉」を開け、一番近い間柄に

【平壌発=金志永】日本の僧侶、仏教徒らが訪朝し、朝鮮天台宗の開祖・義天(大覚国師)ゆかりの霊通寺で法要を行った。「第1回開城霊通寺巡礼日本代表団・平和の祈り」(11月24日~27日)と名づけられたこのプロジェクトには、北南朝鮮の和解と平和統一、朝鮮と日本の善隣友好への願いが込められている。代表団の名誉団長の臨済宗相国寺派管長・有馬頼底師、団長の安禅院円萬寺の住職、西郊良光師、実行委員長の「心のひろば」主宰、崔俊さんの話を聞いた。

“仏教を通じた日朝交流を”/臨済宗相国寺派管長・有馬頼底師

-今回の巡礼の目的について

霊通寺での法要は9年前の2006年に次いで2回目。今回も世界の平和、アジアの安定をお祈りした。それと一日も早く、朝鮮と日本の国交樹立が実現することを祈願した。

臨済宗相国寺派管長・有馬頼底師

臨済宗相国寺派管長・有馬頼底師

霊通寺が復元(2005年)された翌年に天台宗の聖地で合同法要が行われたが、その後、日朝仏教界の交流が途絶えてしまった。

日本と朝鮮は一番近い国でありながら、いまのところ、一番遠い国になっている。私は、9年前、朝鮮対外文化交流協会の方が述べられたその言葉が忘れられなかった。やっぱり隣国とは、仲良くしないといけない。私は、朝鮮の人々とは、一番遠い間柄ではなく、一番近い間柄になりたいと思っている。

そのためには今回の代表団のような交流を根気よく続けることが大事だ。政府同士が頑なになっていても、まずは民間レベルで心の扉を開き、率直に話をする。特に仏教には、国境がない。今回の訪朝でも、仏教を通じた日朝交流を進めていこうと訴えた。朝鮮側の関係者も賛同してくださった。

-昨年、朝・日政府間合意が発表されたが、進展はない。朝・日関係の現状について、どのようにお考えか

要するに米国の朝鮮敵視政策が問題だ。日本は、米国とのつながりを強めると、どうしても朝鮮に対して、冷淡になってしまう。自主的に動けず、従属的になる。

日本には米軍の基地がある。沖縄での新基地建設は、沖縄県民だけでなく、多くの国民が反対しているにもかかわらず、日本政府はそれを強行しようとしている。基地の必要性を主張するとき、日米の政府は、「北朝鮮の脅威」「朝鮮半島有事」を持ち出すが、朝鮮との関係を改善して、地域の安定を実現する政策をとろうとはしない。

日朝関係を改善することは、この地域の緊張緩和につながる。日本の国内でも平和を求める声を高めていかなければならない。民間レベルの日朝交流が、その下地をつくると考える。

-仏教を通じた朝・日交流の具体的なイメージをお持ちか

日本の室町時代、四代将軍、足利義持が高麗版の一切経(釈迦の教説と関わる経・律・論の三蔵、その他注釈書を含む経典の総称=大蔵経)の提供を朝鮮に求めた。高麗天台宗の開祖、義天師がまとめたものだ。四千巻が日本に送られてきて、大切に保管した。なぜかというと、義天師が翻訳した高麗版には、日本の大蔵経にはないものも記されていたからだ。今は、それが、京都の東福寺、建仁寺、そして私が属する相国寺にある。隣国の朝鮮とは、約600年前から、このように仏教を通じた交流があった。この歴史を継いでいかなければならない。

私としては、高麗版をいただいたお礼、お返しをしたい。それが何かというと、やはり交流だと思う。人々の往来から始めたい。今は、朝鮮の人が、なかなか日本に来られないので、今回の巡礼のような事業を日本側が進めていく。もちろん機会があれば、朝鮮からも仏教関係者に来ていただきたい。京都にいらしてくだされば、熱烈に歓迎する。

“人々が出会い、理解することから”/安禅院円萬寺住職 西郊良光師

-日本の天台宗にとって霊通寺復元の意義は

安禅院円萬寺住職 西郊良光師

安禅院円萬寺住職 西郊良光師

私たちも義天師の影響を受けている。例を挙げると、義天師のお弟子さんで諦観という人がいる。天台四教儀という仏教書を書いた。天台宗入門者のための最初の教本だ。これが、今も使われている。日本で天台宗を学ぶ人が必ず手に取る入門書、それを書いた人の師匠が義天師。私たちにとっては、大変尊敬する偉大な朝鮮天台宗の開祖で、霊通寺は、日本の天台宗にとっても聖地だ。

-霊通寺跡の発掘に関わったというが

朝鮮の社会科学院から焼失した霊通寺跡の発掘作業への協力を依頼されたのが18年前。当時、私は大正大学にいた。

発掘は困難を極めた。まず、あの山奥まで行くのが一苦労だった。作業に必要な機材、一輪車やシャベル、移動のための四輪駆動車などは、「万景峰‐92」号で運送した。現場では、人民軍の兵隊さんたちが、専門家の指示に従って作業した。義天師の墳墓を発見し、霊通寺跡を確定した。

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