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朝大オープンキャンパス 特別鼎談「日本人スタッフが熱く語るウリハッキョ!」

2015年06月26日 14:43 スポーツ 主要ニュース

胸を張って言う、ウリハッキョは「日本の宝」

藤代隆介「在日朝鮮人として生きて」

飯田幸司「守りながら攻めに転じる」

野口正彦「仲間とともにリーダーに」

朝鮮大学校オープンキャンパス2015「LINK-SQUARE」(13日)では、特別鼎談「日本人スタッフが熱く語るウリハッキョ!」が行われた。北海道初中高の藤代隆介教員(FCフォルテU18監督)、朝大ボクシング部の飯田幸司コーチ(元プロボクサー、日本スーパーライト級2位、東洋太平洋ウェルター級ランカー)、朝大サッカー部の野口正彦GKコーチ (東京都サッカー協会技術委員、東京GKプロジェクトコーチ)が、朝大・李英哲准教授の司会のもと、それぞれの思いを語った。(まとめ=李永徳)

左から藤代隆介さん、野口正彦、飯田幸司さん

左から藤代隆介さん、野口正彦、飯田幸司さん

司会:在日朝鮮人社会とつながりを持ったきっかけについて教えてください。

藤代:帝京高校サッカー部の頃から、すぐ近くにあった東京朝高や在日朝鮮人の存在は知っていた。高校卒業後、サッカー専門校で出会った北海道初中高出身の趙好烈さんから、朝鮮民主主義人民共和国、在日朝鮮人社会、朝鮮学校について詳しく話を聞いて、興味がわいた。

広島の学校でサッカー部監督に就いていたら、趙さんから連絡が来て「北海道初中高サッカー部を強くしてくれないか」と。学校に足を運ぶと子どもたちの目の輝きが印象的で、保護者や校長も熱心に勧めてくれて、1997年にコーチを引き受けた。

多くの在日朝鮮人たちの温かい支援や言葉に支えられ、その度に日本人として何ができるのかを深く考えた。在日朝鮮人との出会いが人生観を変えてくれた。

飯田:高校時代、父に連れられて行った南の独立記念館で日本による朝鮮への侵略や戦争について知った。衝撃を受け、申し訳ない気持ちで涙が出た。日本人として南北朝鮮が統一する手助けをしなければと思い、プロボクサー生活を送っていた時はトランクスに「南北統一」「ONE KOREA」の刺繍を入れた。

飯田幸司さん

飯田幸司さん

その後スポーツジムで働く当時朝大生の任成壎さん(現、朝大職員、ボクシング部コーチ)に出会った。彼に誘われて足を運んだ朝大の学園祭で、日本の右翼団体が罵声を浴びせている様子を目撃した。

今もなお苦しみを背負っている在日の方々の力になりたくて、任さんに「ボクシングコーチをしたい」と伝えた。朝大の了承を得て、2012年からボクシング部の強化にあたっている。

野口:埼玉や高知の高校でサッカー部のコーチを務め、何度か東京朝高や神戸朝高と試合を行う機会があった。朝高はとにかく「フィジカルが強い」という印象があった。だけど朝大についてはほとんど知らなかった。

地域スポーツの振興を図るために設立された東京のNPO法人でサッカースクールのコーチに就任し、社長の推薦で2006年から朝大でGKコーチを務めるようになった。

当初は部員たちに「なんで日本人なんかに教わらなくちゃいけないんだ」という目つきで睨まれていたのを覚えている。それも在日サッカー界の最高峰にあたる朝大サッカー部のプライドの裏返しだったのかもしれない。

司会:同胞たちと接して感じたことは。

飯田:普段はおちゃらけている学生がボクシングの試合になると表情を変えて、「仲間や後輩、ウリハッキョや同胞社会のために」と言って戦っている。また勤め先が近い西東京第1初中の通学路で、中級部生が本当の兄弟のように初級部生たちの面倒を見ていた。

自分のためではなく、常に誰かのため。そんな心を持った子どもたちは、どんな設備が整った優秀な教育機関で学んでも育てられない。そういう意味で、ウリハッキョは「日本の宝」だと胸を張って言える。

苦労を惜しまず次世代に愛情を注いできた同胞、父母、先生などの姿を目にしてきたからこそ、自然と他人を思う気持ちが身についているのかもしれない。

野口:日本学校に比べて背負う物の重みが違うから、そのような言葉が出るのではないか。朝大サッカー部では多くの協力があって人工芝や移動用バスなど部内の環境が整っており、選手たちも期待に応えようと一生懸命に頑張っている。

野口正彦さん

野口正彦さん

一昨年に関東の舞台から東京都リーグに降格したが、昨年の関東2部参入決定戦で後半ロスタイムに同点弾を決め、PK戦を制して勝利を収めた。当時、朴利基主将はケガで試合に出られないにもかかわらず、「同胞に力を与えたい」と腐らずにバックアップ役に徹していた。劇的な昇格や主将の姿は、同胞社会の縮図だと感じている。

各地の朝高から選手が集まり、切磋琢磨する新たな仲間ができる過程で生まれる団結力もチーム力を高めている。

藤代:「一人はみんなのために、みんなは一人のために」というウリハッキョの集団主義精神が根ざしているからこそ、団結力が生まれている。そして団結力は時に思いもよらない力を発揮するものだ。

たとえば、北京五輪で4×100メートルリレーに出場した日本代表の中で9秒台で走れる選手がいないにもかかわらず、38秒台を出せた理由は団結力としか言いようがない。団結力を養う環境が自然に組み込まれているウリハッキョは本当にすごい。

最近、発達障がいを患っていたり、様々な境遇を持った子どもたちがともに学ぶ大阪の日本学校が映画化されて反響と感動を呼んだが、ウリハッキョではすでに取り組まれていること。このようなシステムを築いているウリハッキョの魅力をもっと日本社会にアピールしてほしい。

司会:同胞たちにメッセージを。

野口:日本の様々な業界の発展に寄与してきた在日朝鮮人たちがいたから、今の日本社会があると言っても過言ではない。感謝すべきなのに、多くの日本市民はそのことを知らない。

サッカーをプレーする選手は皆ファミリーであり、スポーツは国境を越えられると信じている。もしファミリーの中に在日朝鮮人社会について知らない人がいるのなら、気づかせてあげることが自分の役目だ。

学生たちは、「一人じゃない。色々な人の手助けがあって今の舞台に立てるんだ」ということを実感し、さらに上を目指して頑張ってもらいたい。朝鮮学校卒業生としての確固たるプライドを持てば、同胞社会でも日本社会でもリーダーになれる。今後もそのような選手を育てたい。

飯田:1、2世の在日朝鮮人たちが苦しい思いをして築いてきたウリハッキョ。現在も朝鮮半島情勢や日本との関係によって揺れ動き、様々な外圧に晒されているが、私たちは命をかけて守らなければならない。

藤代隆介さん

藤代隆介さん

また守りつつも、攻めにも転じてほしい。「在日」にしかできないことが必ずある。民族教育の中で培った集団主義の精神や思いやりという土台の上に、専門的な力を積み上げれば世界に通じる人材になれるだけでなく、南北朝鮮や日朝を結び、日本社会を変える平和大使のような存在になれるはずだ。

自分たちが時代を変えるんだという強い気持ちを持ってほしい。ボクシングを通して自分に打ち勝ち、結果を残せれば、いっそう自信と誇りを持ってくれるに違いない。

藤代:卒業生たちが多分野で活躍しているにもかかわらず、在日朝鮮人たちはウリハッキョを過小評価している。人間はずっと貶されていると「自分はダメなんだ」と思い込んでしまうが、逆に褒め続ければ自信がついて必ず変われる。ウリハッキョも同じ。良い点を見つけ出し、みんなで力を合わせて伸ばしていくことが大切だと思う。

朝鮮学校の学生たちには「社会に出ても在日朝鮮人として生きてください」と伝えたい。奇異な目で見る人もいるかもしれないが、自分の意見をしっかり持ち、同じ考えを抱いてくれる理解者を作ってほしい。その輪が広がれば同胞社会に対する認識と理解が深まる。

ピンチの時こそ、大きなチャンスが眠っている。もっと色々なことにチャレンジして可能性を広げてほしい。未来は君たちにかかっている。

参加者の声

兪錦順さん(44)

朝大と東京朝高に息子たちを送っているが、心の底からウリハッキョを考え、接してくれている日本の方々がいてくれることに感動した。保護者や学生たちも背中を押され、安心感と自信を得られたと思う。

韓浩康さん(外国語学部4年)

サッカー部の一員として自分たちの存在がどれほど大切で、大きな可能性を持っているのか改めて実感できた。プロ選手になって朝・日の架け橋としての役割を果たし、同胞社会に恩返ししたい。

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