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犯罪的で危機的な人権侵害/森類臣・立命館大学コリア研究センター専任研究員

2014年08月04日 10:18 主要ニュース

自由権規約人権委員会(スイス・ジュネーブ、7月24日)は、日本の人権侵害状況(代用監獄、死刑制度、秘密保護法、「日本軍慰安婦」問題など)に「懸念(concern)」を示すとしているが、ことヘイトスピーチ問題への結論の強さを読めば、懸念レベルではない。法規制(刑法)を適用すべきであると具体的かつ明確に述べている。それは「差別、敵意あるいは暴力に起因する人種の優越性あるいは憎悪を主張する宣伝(propaganda)をすべて禁止するべき」という文で始まり、具体的には「裁判官・検事・警察が、憎悪および人種差別に動機づけられた犯罪(hate and racially motivated crimes)を捜査できるように訓練を受けること」、「人種差別主義者の攻撃を防ぎ、かつ犯人と申し立てられた人が徹底的に調査・起訴され、そして有罪と判定された場合、適切な制裁によって罰せられることを保証する必要な段階をすべて取るべき」とまで踏み込んでいる。

委員会の見解は、ヘイトスピーチ問題における人権侵害の程度は犯罪的かつ危機的であるというものであろう。この見解は的確だ。日本政府は法規制について慎重だが、現状は「表現の自由」についての原理原則的な議論だけでは簡単に片づけられず、差別構造に切り込んだ見方が重要だ。ヘイトスピーチは明確な犯罪行為であるという認識が社会に共通して必要である。犯罪行為ならば、刑法的措置に踏み出さざるを得ないところまで日本の現状況は来ているのではないか。

 

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