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〈ジュネーブより〉「高校無償化」問題の質問引き出す/国連・自由権規約委の対日審査で

2014年07月17日 18:23 民族教育

朝大生、懸命のロビー活動

国連・自由権規約委員会による第6回対日審査が15〜16日にかけてスイス・ジュネーブで行われた。ここでは、懸命のロビー活動を繰り広げた朝大生たちの努力が実り、「高校無償化」問題に関する質問を引き出すことに成功。「無償化」問題が、審査後に出される、日本政府に対する総括所見に言及されることに大きな前進を果たした。総括所見は25日に出される予定だ。

審査を傍聴する在日朝鮮青年学生代表団メンバーたち

審査を傍聴する在日朝鮮青年学生代表団メンバーたち

今回の審査には日本から多くのNGOが参加していることもあり、通常、人権理事会が開催される会議場で行われた。

審査は15日午後に3時間、16日午前に3時間の計6時間かけて行われる予定となっていた。

15日の審査は、委員会から日本政府に向けて事前に送られた事前質問事項(LOI)への日本政府の回答から始まり、その後、LOIに沿って自由権規約委員会の委員たちが日本政府に質問をした。

審査では、イスラエルのシャニイ委員が、日本国内で昨年1年間に外国人へのヘイトスピーチが360件あったとの情報があるとしながら、「ヘイトスピーチが処罰されないのは本当か」「人種差別を扇動する行為をやめさせる手段はないのか」「禁止する具体的な法律はないのか」などと日本政府を厳しく追及した。

また、ドイツのセイベル・フォー委員が在日同胞無年金問題に関する質問を行った。

15日の審査では、LOIの前半部分に関する質問が出されたが、それに対する日本政府の回答がすべて終えられないまま翌日に持ち越された。

審査、延長へ

「高校無償化」問題が言及されているのはLOIの後半部分だった。

審査終了後に日本政府に向けて出される「勧告」を含む総括所見において指摘される事項は、審査の場で質問された問題が中心となることが多い。「高校無償化」問題が総括所見に含まれるか否かは、16日の審査にかかっていた。

16日の審査開始前、朝大外国語学部4年の李京柱さんは、会議場に委員が姿を見せるとすぐに駆けつけ、朝鮮学校の問題について質問してほしいと訴えかけた。朝大政冶経済学部4年の黄希奈さんも、会場をところ狭しと駆け回り、同大教員の李泰一さんと金賢雅さん、そして筆者も、二人の学生を懸命にサポートしながら訴えた。

審査は、前日に残された日本政府の回答から始まり、LOI後半に対する質問と日本政府の回答に対する追加質問へと移った。

前日に在日同胞無年金問題について質問した委員が、アイヌや琉球・沖縄の人たちといった日本のなかのマイノリティの問題に触れたが、在日朝鮮人の民族教育、朝鮮学校の問題までは触れられずに質問が終わってしまった。そして他の質問が次々と投じられた。

結局、「高校無償化」問題の質問が出ないまま、日本政府の回答時間となってしまった。

「ジュネーブにまで来て委員たちからの質問を引き出せないまま活動を終えることになってしまうのか」

会議終了時間を目前に、李京柱さんと黄希奈さんは祈るように議長の方を見ていた。その思いが届いたのか、審査は昼食をはさんで30分間ほど延長されることになった。

最後まで諦めない

昼食もそこそこに、会場で委員を待っていた李京柱さんと黄希奈さんは、朝大生が作成したDVDを見せながら、最後の訴えを行った。

ウォーターバル委員にDVDを見てもらった

ウォーターバル委員にDVDを見てもらった

委員たちは、朝大生の思いが込められた映像資料を目にすると、李さんと黄さんの質問をしてほしいとの必死の要請に耳を傾けた。なかでも過去教職についていたスリナム出身のウォーターバル委員は、二人の話に何度も頷きながらDVDを食い入るように見ていた。

午後3時から審査が再開。日本政府による回答が終わると、議長が委員たちに質問があるか尋ねた。

最初に手をあげたのはウォーターバル委員。同委員は、「高校無償化制度が朝鮮学校には適用されていない」「日本政府はこの問題に対する書面回答のなかで、法令に基づく適正な学校の運営という指定の基準に適合すると認められなかったためとしているが、この点について理解できないのでもう少し詳細に説明してほしい」「なぜなら朝鮮学校の子どもたちは差別を経験しているからである」と日本政府に対し質問を投げかけた。

最後の最後で、「高校無償化」問題に対する質問を引き出すことができたのだった。

黄希奈さんは、「言葉の問題もあり、自分の思いを伝えられるのか不安もあったが、応援してくれている朝大生だけでなく、折鶴の飾りと激励の手紙を贈ってくれた群馬のオモニたちをはじめとするすべての人たちのことを考えると自然と体が動いた。質問してくれたのは、私たちの思いが委員に届いたからだと思う」と話した。

李京柱さんは、「どうして質問が出ないのかと焦る気持ちもあったが、継続して訴えかけたことがよかったのではないか。これまでも在日同胞は差別や逆境に負けずたたかってきたが、自分も皆の声援を支えに活動したことで、最後まで諦めずに活動することができた」と語った。

一方、朝大生の懸命なロビー活動を見ていた日本のNGO関係者たちは、「最後までよくがんばった」「日本でも連帯してたたかっていこう」と激励の言葉をかけてくれた。

(在日本朝鮮人人権協会事務局・宋恵淑)

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