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〈国体・ボクシング〉ライバルたちも脱帽する「精神力」/李健太選手の強さ

2013年10月09日 17:05 スポーツ

「背負うものの重みが違う」

李選手も「良きライバル」と語っていた駿台学園高校の鈴木選手との一戦。(2012年の選抜大会で)

李選手も「良きライバル」と語っていた駿台学園高校の鈴木選手との一戦。(2012年の選抜大会で)

勝負の世界には勝者がいれば、もちろん敗者もいる。李健太選手の高校ボクシング6冠という華々しい偉業の陰で、辛酸を舐めた選手たちもいた。ある選手は言葉の端々に悔しさを滲ませながら、またある選手は尊敬の念を込めながら、実際に拳を交えた6冠王者の「強さ」についてさわやかに語った。

多くは、李選手のボクシングの技術は高校生の中でもピカイチだと、口を揃える。

2012年の茨城での「選抜」決勝、新潟での「インターハイ」準決勝、2013年の山梨での「選抜」準決勝などで接戦を演じ、李選手も「良きライバル」と語っていた駿台学園高校(東京都)の鈴木雅弘選手は、「距離の取り方がうまく、ボクシングがうまい。これまで健太を目標に頑張ってきた」と話す。今大会でも対戦を望んでいたが、実現はしなかった。高校ボクシングを通じて「最後までリベンジを果たせなかった」と肩を落とす鈴木選手は、「大学でもボクシングを続ける。東京都代表として『国体』に出場し、今度こそは健太に勝ちたい」と雪辱を誓った。

今回の「国体」決勝(8日、東京)で、判定の末に敗れた保坂剛選手(福岡・東福岡高校)は、試合を終え「相手が一枚上手だった」と敗北を認めた。そして、「決勝というプレッシャーのかかる場面でも強さを発揮できる健太選手がすごい。動きも早いし、ポイントの取り方もうまい。本当にすごい」と賛辞を惜しまなかった。

そんな中、2013年の佐賀インターハイの決勝で対戦した奈良朱雀高校(奈良)の米澤直人選手は、「これまで近畿大会で何度も戦ってきたが勝てなかった。悔しい」とうつむき加減に話しながら、李選手の本当の強さは、その「精神力」にあると指摘した。

米澤選手が李選手の試合で一番印象深かったのは「選抜」の決勝(2012年、茨城)で鈴木雅弘選手と対戦した試合だという。「終始、鈴木に有効打を浴び、負けが確実かと思われたが、3R目で負けじとカウンターを当て、勝ってしまった。あの時の気持ちの強さは見ていて圧倒された」と話す米澤選手は、「今ではチャンピオンとして自信もつけ、『絶対に負けられない』という気持ちで連勝記録も更新している。大きな舞台でも自分の得意とするボクシングができる李を見ていると、学ぶことが多い」と語った。

大阪府代表の須藤秀樹監督(興國高等学校)は、「ボクシングのバランスがよく、スピードもある。ボクシングに対する姿勢もいい。なによりも1年生の頃から彼のボクシングを見ているが、気持ちの強さは折り紙つきだ」と語った。

李選手は、中学生から始めたボクシングを通して、拳青会(地元の同胞ボクシングサークル)や朝高ボクシング部、大阪の学校や全国の同胞、祖国のコーチ、その他にも多くの人々と出会い、支えてもらった。

在日本朝鮮人ボクシング協会の梁学哲会長は、李選手の「精神力」の根底にあるのは、そのような人々の存在が大きいと指摘した。

「健太は、高級部からボクシングを始めた朝高生よりキャリアが長いため、その分人々の支えも大きい。期待に応えようとする気持ちも当然強くなり、逆境も跳ね返すことができた。在日朝鮮人という歴史的背景を持つ健太の場合、日本の選手と比べても、背負うものの重みが違う」(梁学哲会長)。

 (李永徳)

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