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ねらいは「戦争ができる国」、「暴走」する日本(下)

2013年05月23日 10:42 主要ニュース 朝鮮半島

米軍指揮下、共に戦う軍隊へ/「北の脅威」を口実に

最近の朝鮮半島情勢の緊張を口実としながら、軍拡を急速に推し進めている安倍政権。

ついには「戦力の不保持」と「交戦権否認」を精髄とした憲法の改悪にまで着手しようとしている。

自民党は17日、「『敵基地攻撃能力』保有を検討すべき」との提言を政府に出した

「敵基地攻撃能力」検討も

国連安保理の対朝鮮制裁決議の採択と、大規模な米・南合同軍事演習の実施によって朝鮮半島情勢の緊張が激化した4月初旬、「北朝鮮の新型長距離弾道ミサイル発射の兆候」に関するメディア報道が続く中、「安保危機」がつくり上げられた。

安倍政権は同7日、自衛隊に破壊措置命令を発令。朝鮮東海にすでに配備していた海上配備型迎撃ミサイル(SM3)搭載型イージス艦に加え、地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)を首都圏の各所に展開した。

また、「PAC3」を沖縄県の那覇基地(那覇市)と知念分屯基地(南城市)に常時配備する計画を前倒しして実行することを決めた。

一方、朝鮮半島緊張激化の要因となった米・南合同軍事演習「フォールイーグル」に、沖縄に配備されていた米軍の新型垂直離着陸輸送機「MV22オスプレイ」が初めて参加した。

「MV22オスプレイ」は昨年10月、沖縄県住民らの強力な反対闘争にも拘わらず、普天間基地(沖縄県宜野湾市)へ強行配備された。今年1月には沖縄県のすべての市町村が日本政府に配備撤回を求めたが、米日当局は住民の声を無視したままである。

朝鮮半島での軍事的対決構図が先鋭化する中で、自民党幹部の間からは「ミサイル攻撃」「北の挑発」を未然に防止するために「敵基地攻撃能力の保有を検討すべき」(4月14日、石破茂幹事長)との主張も飛び出した。

これまで日本は、専守防衛を建て前として敵基地攻撃のための打撃力保持を公言できない立場にあった。日米防衛協力のための指針(ガイドライン)では、打撃力は米軍に全面的に依存するとしている。

安倍首相率いる自民党の国防部会・安全保障調査会は今月17日、「(朝鮮の)ミサイルの脅威」に対する抑止力強化を強調したうえで「敵基地攻撃のための『打撃力』保有を検討すべき」との提言を政府に出した。

背景に米軍事戦略

日本の政権が朝鮮半島情勢の緊張を利用して軍拡を推し進めている背景には、経済に次いで軍事大国としての地位を得ようという野心が隠されている。

一方で、米国の軍事戦略も密接に関わっている。

冷戦終結以降、米国は自身の新たな世界戦略に適合した安保協力を日本に要請。自衛隊に、1980年代までは考えられなかった海外任務や米軍の軍事作戦への支援行動を求めるようになっていった。

これを受け、日本は米軍への後方支援を可能にすべく、「テロ対策特別措置法」(2001年10月)などといった一連の法整備を進めてきた。

2007年1月には防衛省が発足すると同時に、自衛隊という名の軍隊は性格を大いに変え、「我が国周辺の地域」「国連を中心」云々までを本来の任務とする軍隊に生まれ変わった。つまり、米国が主導する海外での軍事行動をも任務とする軍隊の誕生だった。

最近では米国の新たなアジア介入戦略の下、「北朝鮮のミサイルの脅威」などを理由に在日米軍基地への新兵器配備が次々と推し進められている。

4月29日(現地時間)、安倍政権発足後初めて行われた日米防衛相会談では、米国と日本が「北のミサイルの早期探知」を名分として、日本各地に先端兵器を多数配備することに関する合意がなされた。

合意では、2基目のTPY2レーダー(早期警戒能力を持つ海上配備型の高性能「Xバンドレーダー」)を経ヶ岬分屯基地(京都府丹後市)に配備することや、「MV22オスプレイ」12機を今夏に岩国基地(山口県岩国市)に陸揚げし、その後普天間基地(沖縄県宜野湾市)に追加配備することが確認された。

「大日本帝国」への回帰

安倍政権は、軍備増強と並行して憲法改悪を実現しようとしている。経済回復を基盤とした世論の支持を後ろ盾とする策略だ。

日本の軍事大国化実現において「最後の障壁」となっているのが、「戦争放棄、交戦権否認、戦力の不保持」を規定した憲法第9条であるが、安倍首相はこれまで、ことあるごとに憲法「改正」の必要性を繰り返し、国防軍創設まで口にするようになった。

3月9日には、「国連が(武力行使を伴う活動である)集団安全保障を行う場合、日本は責任を果たすことができるのか」と述べ、憲法を「改正」して武力行使への道を開くべきであるとの考えを示した。

これは何を意味しているのか。それは、米国の世界戦略を実行していくうえでの国づくりを日本が進めているということである。日本はこれまで米国の要求に沿って、自衛隊を初期は米軍の補完戦力(後方支援部隊)として、次は米軍を補佐して共に軍事行動し(以上は朝鮮戦争以降冷戦を経てソ連崩壊まで)、今日においては米軍の指揮下、共に戦う戦力(91年の湾岸戦争後、2001年のアフガン、それに続くイラク侵攻)へとなし崩し的に変容させ、再軍備を進めてきた。

現在、安倍政権が突き進んでいるのはまさに、米国の要求を盾にした日本独自の意思の追求、すなわちかつての「大日本帝国」への回帰なのである。

(金里映)

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