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〈本の紹介〉司法が認定した日本軍「慰安婦」

2013年05月21日 15:46 主要ニュース 文化・歴史

被害・加害事実は消せない

91年8月に日本軍性奴隷制の被害者、金学順さんが名乗り出てすでに20年を越える。この問題が戦時性暴力の事実を明らかにして被害者の正義の回復と女性の人権問題を提起し、国際社会もこの問題の法的解決を繰り返し勧告してきたが、日本では橋下妄言に見られるように、その事実すら否認する動きがいまだに顕著である。

坪川宏子/大森典子著、かもがわ出版、600円+税、075-432-2868

この間、各国の被害者が日本政府を被告にして謝罪と賠償を求めた裁判は、全部で10件にのぼる。このブックレットはそのうち8件の裁判で認定された「背景事情と被害事実」を網羅している。つまり、日本の司法が認定した加害と被害の「事実」が明確に提示されているのだ。 筆者は「一読されれば、否定派の言説など吹き飛ばす圧倒的な力で、歴史の真実が浮かびあがってくるでしょう」と述べている。そこには、18年間、被害者・弁護士・支援者が全力を傾けて闘った裁判で獲得した「事実認定」の成果が、もっと周知されてほしいとの願いがこめられている。

多くの判決ではこうして認定した事実をもとに、当時の国際法、国内法に照らして日本軍の行為は違法であると厳しく加害の違法性を指摘している。そして、単に違法というだけでなく「ナチスの蛮行にも準ずべき重大な人権侵害」であり、被害者の今も続く苦しみを認め、これを放置すれば「新たに人権侵害を引き起こす」(下関判決)とした。また、「厳しく常軌を逸した卑劣な蛮行」(山西省性暴力事件東京地裁判決)、「刑法または陸軍刑法および海軍刑法所定の強姦罪などにより処断される重大な犯罪行為であったと言うべきである」(海南島事件東京高裁判決)などと判断し、基本的には当然賠償されるべき人権侵害であったことを明確にしている。(粉)

ブックレットの内容は次の通り。はじめに/「慰安婦」裁判が残したもの/日本軍「慰安婦」の事実をめぐって/判決で事実認定された原告の被害と日本軍の加害/韓国人(遺族会・関釜・在日)裁判/オランダ人裁判/中国人(一次・二次、山西省、海南島)裁判/事実認定のまとめ/参考資料(第二次調査公表時の発表文・内閣官房長官談話など)

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