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「慰安婦」問題、橋下市長の発言に怒り噴出

2013年05月18日 14:10 主要ニュース

「許しがたい人権侵害」「歴史認識欠く発言」

「慰安婦制度は必要だった」。日本軍「慰安婦」問題をめぐって「軍の強制性を示す証拠はない」と主張する日本維新の会共同代表である橋下徹大阪市長が13日、当時の「慰安婦」制度を容認する考えを表明し、物議を醸している。

橋下市長は「なぜ日本の従軍慰安婦制度だけが取り上げられるのか。当時は(「慰安婦」制度を)世界各国が持っていた」などと述べたほか、沖縄の米軍司令官に「風俗業の活用」を促したことも明らかにした。

一連の発言に対し、日本軍「慰安婦」問題に取り組む人々や市民団体からは怒りの声があがっている。

「口にしてはならない暴言」

映画監督の朴壽南さんは、ドキュメンタリー映画「アリランのうた―オキナワからの証言」(1991年)以来、一貫して「慰安婦」問題に関心を寄せている。

朴さんは、一連の橋下市長の発言にまざまざとよみがえるいくつかの場面があると述べ、次のように語った。

「1995年5月、水野法相(当時)の『慰安婦は公娼だ』という発言に韓国のハルモニたちが、『このままでは死ぬに死ねない』と、15人が来日した。『娼婦』にでっち上げられてきた『慰安婦』被害者たちが沈黙から立ち上がったのだ。その中には、13歳で拉致された河壽任さんがいた。『最初の夜、司令官が私をなぶりものにした。噛みついて、滅多打ちにされ、3日間、私は死んだ―。生き返ったがこの通り右腕は折れてぶら下がったままだ。見舞金260万だと? この体を元に戻せ! 私を返してくれ!』。天皇のため働けと言われ、人間の尊厳を無残に踏みにじられた『少女』たちの生の声を、産む性を蹂躙されたその怒りを、橋下や日本の政治家に伝えたい」

15日、「I女性会議・大阪」など3団体の代表らが大阪市役所で記者会見を行い、橋下市長の発言を厳しく非難した。また、市長宛てに謝罪と発言の撤回を求める抗議文を提出した。

「I女性会議・大阪」のメンバーの1人である長崎由美子さん(「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」事務局長)は、橋下氏の「慰安婦制度が必要だった」という発言について、「『戦争には犠牲が必要であった』というようなことは、本来ならば口にしてはならないこと。このような暴言が公然と発せられ、マスコミに大きく取り上げられるような社会の風潮が恐ろしい」と述べた。

長崎さんは、「橋下氏の発言は、日本が過去に行った侵略と植民地支配をめぐる歴史認識を欠いたもの。これは朝鮮学校差別の問題にもつながる」と指摘する。

一方、朝鮮学校に対する弾圧が横行しているかたわらで、「日の丸・君が代」強制の府条例をはじめ、橋下市長を中心として市民たちに対するさまざまな「締め付け」が強化されている大阪の現状についても言及しながら、「まるで治安維持法によって統制されていた戦前のよう。意見することがはばかられ、差別などに声をあげにくい状況がつくられてしまっている」と危惧した。

「『第二の橋下』生まれかねない」

現代史の専門家や国際人権NGO関係者も、橋下市長の発言を非難した。

「地域に学ぶ関東大震災」の著者の一人である小薗崇明さん(専修大学大学院文学研究科博士後期課程在籍)は、「橋下市長の発言にはがっかりした。私が考えているのは、なぜ今、日本で国民に人気のある為政者があのような発言を平気でできて、それが許されるのかということだ。戦後に行ってきた歴史研究や平和教育は何だったのかという問題がたち現れていると思う。この点を考えなければ、『第二の橋下』がより過激な形で生まれかねない」と話した。

40年近く関東大震災時の朝鮮人虐殺を追及している平形千恵子さんは、「呆れて言葉も出ない。人権をひとかけらも感じない発言。関東大震災時に罪のない朝鮮人を虐殺した当時の日本人と同じく、人を人として見ていない侮蔑を感じる。関東大震災時に起こった朝鮮人虐殺、そして現在このように『慰安婦は必要だった』と言える状況を考えてみると、今も昔も根は変わらないと思った。日本にはこんなことを思っている日本人ばかりいると思われることが一番恐ろしい」と話した。

反差別国際運動(IMADR)の原由利子事務局長は、「『慰安婦』制度とは、戦時性奴隷制であり、その容認は言語道断。橋下市長の発言は、犠牲になった女性たちの尊厳を踏みにじる暴言であり、女性を道具としか見ない全ての女性に対する人権侵害だ。戦後国際社会が再発防止のために60年かけて国際人権法や人道法を発展させてきた、その議論や努力を完全に無視する暴挙である」と述べ、「社会的に影響力と責任がある立場にある公人の問題発言を許せば、日本の民度が問われる。何らかの処分等抑制策が必要」と話した。

(取材班)

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