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〈本の紹介〉姜信子、ザーラ・イマーエワ著「旅する対話 ディアスポラ・戦争・再生」

2013年04月12日 14:50 文化・歴史

明日を生きる人たちの運命の軌跡

これは、在日三世の作家である姜信子さんと、チェチェン人映像作家であり、国際アートセラピーセンターDiDi創立者のザーラ・イマーエワさんによる対話の記録。朝鮮とチェチェンのディアスポラたちが、彼女たちの散り散りバラバラにされた運命の軌跡を、カザフスタンの地で探し求めた。

春風社。1,800円+税。TEL. 045-261-3168

カザフスタンは、「日本のスパイ」というレッテルを張られた高麗人が追放された(1931年)場所であり、1930~40年代、旧ソ連時代、この地に追放されたコーカサスの17の民族の流刑地でもある。コーカサス地域の北部に位置するチェチェンの民も、1944年、根こそぎ50万人がカザフスタンの荒野へと追放され、その半数が死んだといわれている。

チェチェンは16世紀、帝政ロシアの侵略を受け、19世紀にロシアに併合された。ある日突然「強制移住」によって、一瞬のうちにすべてを奪い取られ、平和な日常が一夜にしてひっくり返る。物のように貨物列車に詰め込まれ、否応なしに押しつけられた難民としての「運命」がカザフスタンの荒野にちりばめられていた。

文化や伝統が奪われ、歴史の運命にほんろうされたチェチェン人。しかし、行く先々で会うチェチェン人たちは、むしろ人間味あふれる温かさで、見知らぬ旅人たちを迎え入れる。同時に、陽気にふるまう人たちがふとした時に見せる表情に潜む歴史の黒い影を二人は見た。二人の旅人たちは彼らの声を集め、自らの運命と照らし合わせ、その中から未来への希望を探っていく。

「対話とは、問うことをあきらめず、生きることをあきらめない者たちの明日への確かな歩み。…本書の『旅する対話』という名は、つまり『生きる』ということの別名である」(姜さんの言葉、本書から引用)(梨)

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