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〈本の紹介〉「アジア現代女性史」8号」/冷戦時代の国際女性運動に光

2013年04月26日 10:23 コラム

1951年5月にWIDF(国際民主女性連盟)が朝鮮に派遣した女性国際調査団に参加した唯一の英国人モニカ・フェルトン(1906年9月23日~1970年3月3日)についての研究が、前号の「アジア現代女性史」に発表された。

モニカ・フェルトンは、英国女性史のなかでは正当に位置づけられておらず、日本でも「あたりまえの女たちー世界の母親の記録」(岩波書店)が読まれているくらい。本号は、その続きとして、この調査団に参加したモニカ・フェルトンとリリー・ベヒターを取り上げている。特集名は、枠組みを広げて、「冷戦時代の国際女性運動」。モニカという一人の英国人女性を照らし出すことによって、従来は女性史叙述のなかで無視されがちであった、朝鮮戦争休戦協定を前後する激烈な冷戦時代における国際女性運動の様相に接近しようとした論文。

また、リリー・ベヒターはドイツ民主女性連盟(DFD)の一員で、占領下の西独から朝鮮戦争真相調査団に参加し、米軍法廷で有罪判決を下された女性で、1957年のDFD非合法化まで西独のDFDの議長だった。論文ではWIDFの本部が置かれた東独におけるDFDについて、創立から今日までの全体像を扱っており、ほとんど忘れられていたリリー・ベヒターの存在について光が当てられている。冷戦政治のなかで失われつつある記憶を蘇らせる地道な努力を続けてきた研究者らの姿勢に改めて敬意を表したい。(粉)

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