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〈3.31全国集会&パレード〉長期戦になろうとも「あきらめない」

2013年04月01日 16:26 主要ニュース

休日の銀座に響く「NO!」の声

休日でにぎわう日本最大の繁華街にシュプレヒコールがこだまする。「日本政府は朝鮮学校生徒に『高校無償化』制度を即時適用せよ!」「朝鮮学校に対する差別絶対反対!」。3月31日午後3時、日比谷野外音楽堂をスタートした全国集会参加者たちを中心とした数千人のパレード隊は、新橋駅、外堀通り、銀座、東京駅を経て、常盤橋公園までの約3.5kmを歩きながら、「高校無償化」制度除外をはじめとする朝鮮学校に対する差別是正を訴えた。

オモニたちの怒り

この日の気温は春を忘れさせるほどに終日寒かった。雨こそ降らなかったものの、最高気温が10度を上回らない曇り空のもと、高齢者からベビーカーに乗せられた赤ちゃんまでが、途切れることのない長い隊列を編成した。

10を優に越える各ブロックの隊列からは、各先導車の合図にあわせてシュプレヒコールが途切れることなくあがり続けた。ケンガリをはじめ朝鮮の伝統楽器で奏でるサムルノリで注目を集める人たちの姿、のどがかれんばかりの大声を張り上げる若者たち。

参加者たちの手に掲げられた横断幕やプラカードには、参加者の気持ちを代弁する言葉の数々が並んだ。「日本政府はすべての子どもたちの学ぶ権利を保障せよ!」「『高校無償化』からの朝鮮学校排除絶対反対!」「朝鮮学校はずしにNO!」「朝鮮学校の子どもたちに笑顔を」「許すな!朝鮮学校への差別政策を!広げよう!朝鮮学校への支援の輪を!」……。中には、東京朝鮮中高級学校の生徒たちが作った「アボジ、オモニが悲しむ顔、怒る顔をもう見たくない!」という、胸が締めつけられるような文言も。

林立するビルに反響するシュプレヒコールに道行く人たちも足を止め、また携帯電話で撮影する人たちも多かった。

この日、パレードの先頭には神奈川県の朝鮮学校に子どもたちを送る5人の母親たちが立った。そのうちの一人、金星樹さん(43)は怒りに声が震えた。日本政府の朝鮮学校「無償化」除外のための省令改悪と時を同じくして、神奈川県知事は朝鮮学校への補助金打ち切りを表明した。3月まで横浜朝鮮初級学校オモニ会会長を務めた金さんは、保護者代表として県庁への要請活動も行ってきた。

「何よりもまず、朝鮮学校に対する差別、朝鮮人に対する差別なんだとしっかりと訴えたい。国や地方自治体が差別していることが、まかり通ってしまっている。怒りがこみ上げてくる。神奈川県の副知事にも会ったが、朝鮮学校に対する理解があまりにもなく、また理解しようとする努力も感じられなかった」

そんな金さんにとって多くの日本人が集まり、差別反対を訴えたこの日の集会は、「日本の良心」が感じられた場だったという。「(朝鮮学校を守るために)やれることはすべてやっていきたい。長期戦になっても絶対にあきらめない」。

鄭順善さん(79、女性同盟茨城県本部顧問)は高齢により足が不自由な身でありながら、茨城県から駆けつけた。孫たちの代になっても変わらない朝鮮学校に対する公的ないじめに、いても立ってもいられなかった。「1、2世が血と汗で守ってきた朝鮮学校に3、4世が何の心配もなく通えるように、今こそたたかわなければと思った」。

鄭さんにとって朝鮮学校は「すべて」だったという。JRの定期券学割適用など朝鮮学校に対する差別是正を求めて、この日の集会が行われた日比谷野音に何度足を運んだことだろう。一つひとつ獲得してきた権利。「朝鮮学校に通う子どもたちが今も苦しんでいる現状が悲しい。過去数十年に渡る私たちの苦労が水の泡にならないよう、声をあげていきたい」。民族教育を守り抜くことが「私の信念」だと語る鄭さんは、力強い若者たちの姿を見ながら、改めて朝鮮学校のすばらしさを感じたと話す。

沿道からの拍手

朝鮮学校に対する差別是正を求めるパレードに対し、口汚い言葉でヘイトスピーチを行う右翼たちの姿は、異様な光景として映った。通行人が耳をふさぐほどの大音量でまくし立てる言葉の暴力は、異常だ。

JR有楽町駅周辺、黒塗りの街宣車の対向車線を歩くパレード隊に拍手を送る人がいた。JRから地下鉄に乗り換えるために、たまたま通りかかった田中さん(63)だ。「朝鮮学校は『無償化』されるべき。子どもたちには平等に教育を受ける権利がある」。耳をつんざく街宣車からの「攻撃」に対して、「あれだけの大きな声をあげる右翼を、警察は何で取り締まらないんだ。頭にくる。日本の侵略戦争も『正しい』と話すような人たちのことなんて、気にする必要はない」と切り捨てながら、「私のように応援している日本人もいることを知ってほしい」とエールを送り続けた。

パレードのゴール地点となった常盤橋公園で、参加者を労っていた朝鮮学校支援団体である「チマ・チョゴリ友の会」の松野哲二代表(64)は、ヘイトスピーチが公然と行われる現実に「日本のどこに民主主義があるのかと問いたい」と怒りを口にしながらも、「今日のために本当に多くの人たちが頑張った。この頑張りを、続く闘いの力にしていきたい」と先を見据えた。

松野さんは2000年代初期に朝鮮学校卒業生の大学受験資格問題が浮上した当時を振り返りながら、「あの時、日本人は組織だって声をあげてはいなかった。それが今では多くの支援団体ができ、連帯の輪が広がっている。今日は、連帯の輪への希望に満ちた集会となった。でもまだまだ足りない。もっともっと多くの日本人が、日本の中にある差別に反対して立ち上がるべきだ」と表情を引き締めた。

(鄭茂憲)

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