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〈高校無償化〉大阪朝鮮学園が日本国を提訴、「いまだ適用されないのは違法」

2013年01月26日 13:21 民族教育

大阪地裁に訴状を提出する大阪朝鮮学園関係者と弁護士ら

学校法人大阪朝鮮学園は24日、「高校無償化」制度を適用しないのは違法だとして、日本国を相手取り、制度の施行規則に基づいて指定を義務付けるよう求める訴訟を大阪地裁に起こした。

大阪朝鮮学園は、「無償化」の指定を受けるための申請手続きを2010年11月に完了。その後も文部科学省から繰り返し要求される申請書類の作成、調査、視察、質問などに真摯に対応してきた。

しかし、日本政府は一旦停止した審査を再開した(2011年8月)後も、結論を出していない。しかも安倍政権は、朝鮮学校を制度から完全に除外する方針を示した。

一方、各地の朝鮮高級学校では、朝鮮学校排除から3度目となる卒業式を3月に控えている。

1年以上の不作為、「相当な期間」

大阪地裁に訴状が提出された後、大阪司法記者クラブで記者会見が開かれた。

会見では、大阪朝鮮学園の代理人である丹羽雅雄弁護士、大阪朝鮮高級学校(以下=大阪朝高)出身の金英哲弁護士、大阪朝鮮学園の玄英昭理事長、大阪朝高卒業生の高民起さん(18、関西学院大学1年)が発言した。

会見を行う大阪朝鮮学園関係者と弁護士ら

丹羽弁護士は、「無償化」制度から朝鮮学校だけが除外され、審査再開から1年5カ月以上も結論がでていないことなどを、時系列とともに解説。その中で、開校間もない他の外国人学校が朝鮮学校と同じ規則に基づいて申請し、迅速に適用されたにもかかわらず、朝鮮学校だけが適用されず、不作為の状態が続いているのは、明らかに差別であり違法だと述べた。

大阪朝鮮学園の玄理事長は、政府が朝鮮半島を取り巻く情勢を口実に制度適用を先延ばしし、朝鮮学校を完全に排除しようとしていることについて、「政府自らが政治的判断ではなく、教育上の観点から客観的に判断するといっておきながら、なぜこんな理不尽なことをくり返すのか。そもそも拉致事件と朝鮮学校生徒への財政支援は根本的に性格の異なる問題であり、『無償化』からの排除が拉致問題の解決を近づけるものでもない。政治・外交問題を持ち込み朝鮮学校生徒を『無償化』から排除することは不当な差別にほかならない」と語気を強めた。

原告側弁護団は、子どもたちが自国の文化、歴史について自由に学ぶ権利、普遍的人権は必ず保障されなければいけないとしながら、日本がこれまで国連の人種差別撤廃委員会から再三勧告を受けてきたように、この問題が国際的な関心事であると強調した。

「母校が政治に利用されて悔しい」

高民起さんは会見後、「無償化」の訴訟が長い月日を経て、やっと実現したことについて複雑な表情でこう話した。

「ラグビーを通じて他の同年代の日本人と交流もあるが、日本の高校となんら違いのない私たちの母校が、いつも政治的な問題に利用され、差別されるのが本当に悔しかった。朝鮮学校で学べたから今の自分がいるし、朝鮮人としてのアイデンティティーを保っている。卒業生代表として私たちの当然の権利を主張していきたい」

高さんは、大学に進学して生活するなかで、ウリハッキョの存在を知らない人や、朝鮮人が悪い人たちばかりだと偏見を持っている人がいることを知ったという。そして、「今日、記者会見である記者に、『何が差別を助長していると考えるのか』と質問を受けたが、それは連日私たちのことを悪く報道し、また私たちの本当の姿を見えにくくしている一部マスコミのせいだと思った。自分の思っている本当の気持ち、考えを話しても、朝鮮学校や在日朝鮮人に対する間違った報道や悪意のある報道がなされる限り、偏見を持つ人はなくならない」と指摘した。

「朝鮮学校をはじめ在日朝鮮人がこれまで日本政府からもらった『恩恵』など、何一つない。すべてこの社会の差別に抗って自らの手で勝ち取ってきたものばかりだ。今後は、私たち新しい世代がもっと全面に出て、当事者の一人として声を挙げていきたい」(高さん)

会見場には、母校の素晴らしさについて堂々と誇りを持って語る高さんの姿をじっと見守る「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」など、朝鮮学校を支援する市民団体関係者の姿もあった。

(李炯辰)

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