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〈ハングルの旅 18〉朝鮮における識字事業

2013年01月15日 12:47 歴史

解放直後の普及活動

解放直後、北朝鮮には230余万人(15~50歳)の非識字者がいた。これは当時北朝鮮の成人のほとんどが漢字はもちろんのことハングルの読み書きができなかった人たちであったということを意味する。このことは解放後の朝鮮の社会改革と建設事業を推し進めていく上で大きな障害であった。

科学技術や知識の習得には文字の習得が必要だからである。北朝鮮では解放後、正規の初等教育を実施する傍ら230余万人の非識字者をなくす問題を重要な政策課題として提起し、大々的な識字事業(文盲退治事業)を推進する対策を立てた。

北朝鮮臨時人民委員会は行政10局の一つである教育局の中に成人教育部を設置し、識字事業を専門的に担当させた。北朝鮮臨時人民委員会は、全国で自然発生的に行われていた「成人学校」や「ハングル学校」をより効果的に推進するため識字事業に対する国家の統一的な指導体系を確立した。こうすることで識字事業に対する国家の決定や指示、施策が末端にまで迅速かつ正確に伝えられ、全国で識字事業が統一的に進められるようにした。

1946年11月25日に北朝鮮臨時人民委員会は決定第113号で「冬季農村文盲退治に関する北朝鮮臨時人民委員会決定書」を採択した。決定書には1946年12月1日から1947年3月31日までの4カ月間「冬季農村文盲退治運動」を展開することとその対策について指摘している。

1947年11月には北朝鮮人民委員会第52回会議で過去1年間の識字事業を総括し、1949年3月末までに終えることを決定した。これを推進するため北朝鮮人民委員会は決定第83号「文盲退治運動推進に関する決定書」を採択し、1947年12月1日から1948年3月31日までの4カ月間2回目の「冬季文盲退治運動」を展開することにした。この決定を遂行するために地方の人民委員会は、講師の選抜と養成、教具備品と教科書、ノート、鉛筆を始めとする学用品、教室で使う電球、暖房などの学習環境を整えた。

また1948年12月1日から1949年3月31日までの4カ月間3回目の「冬季文盲退治運動」を展開した。

北朝鮮では識字事業を国家的な行政機構体系だけではなく、1946年12月に「文盲退治指導委員会」、「文盲退治検閲委員会」という非常設的な識字事業指導機関を設けてこの事業を推し進めた。「文盲退治指導委員会」は主に電球や白墨、教具備品などの物資の調達と学校設立や運営に関する問題の解決を担当した。「文盲退治検閲委員会」は主に「文盲退治指導委員会」が識字事業に対する政府の決定と指示が正確に執行されているのかを調査し、対策を立てる仕事を担当した。

解放直後、北朝鮮で識字事業を展開するに当たってまず行ったことは非識字者を調査することであった。文盲者を調査するには文盲者の基準を設定する必要があった。北朝鮮ではその基準を、ハングルの読み書きができるかどうかを基本に簡単な計算ができるかを考慮した。漢字は除外した。これは出版物における漢字の使用を廃止することを前提にしていたからである。

次に文盲者の年齢を規定する必要があった。北朝鮮ではこの年齢を13歳から50歳と規定した。これは身体の発育や機能の発達、教育学的な問題を考慮して決められた。このように基準を決めた後、非識字者の調査を里、洞を単位にして家庭訪問の形で進められた。そこではハングルを読む簡単な試験が行われ、ハングルの読み書きと算数問題の試験の結果で識字対象者が決定された。この結果230余万人の文盲者がいることが確認され、その人たちを対象にした識字事業が展開されることになった。この識字事業の結果1946年11月までに30万人が非識字から解放された。そして1949年3月末までに200万人が文盲から解放され識字事業が成功裏に終わったのである。

識字事業を推進するため、金日成主席が1946年2月北朝鮮臨時人民委員会第一回会議の第一議案に鉛筆の生産問題を討議し、対策を立てたのは有名な話である。この決定により鉛筆を生産する民間企業と技術者が全国的に動員され国家的な支援の中、1946年末には500万本の鉛筆を生産するに至った。また識字事業を大衆運動として力強く展開するために金日成主席の発起で「李ゲサン運動」(文盲者であった李ゲサンに1947年8月、ハングルを習得する課題を与え、それをやり遂げた李ゲサンの名前をとって識字事業を大衆運動へと導いた)が全国で繰り広げられ識字事業の成功に大きな貢献をした。

解放直後の識字事業の成功は、朝鮮におけるハングルの普及を確固たるものにし、ハングルを全人民の所有物にしたという点でハングルの普及の歴史に輝かしい足跡を残した。

(朴宰秀、朝鮮大学校朝鮮語研究所所長)

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