南朝鮮大統領選挙の投票日(12月19日)が近づく中、与野党候補らの政策、公約をめぐる攻防戦が激しく繰り広げられている。ところがセヌリ党の朴槿恵候補は、内外の同胞が大きな関心をもつ北南問題に対して自らの真意を明らかにしていない。
11月5日、朴槿恵候補は対北政策を含む外交安保統一政策を発表したが、北南首脳合意である6.15共同宣言、10.4宣言に対してはひとことも言及しなかった。
朴候補は6.15共同宣言発表の2年後である2002年に平壌を訪問している。当時の与党ハンナラ党を離脱して韓国未来連合の結成準備委員長として新たな活躍の舞台を確保しなければならなかった「元大統領の娘」にとって、北から受けた「歓待」は、大きな政治的資産になったであろう。
平壌では最高指導者とも面談した。面談の詳細は公開されなかったが、面談に先だって行なわれた北側幹部との宴会は記者たちも取材した。宴会の席上で演説した朴候補は、自身の訪朝が実現したのは、6.15共同宣言があったからであり、政治家として今後、南北関係に役立つことをしていくと述べた。
ところが朴候補は、自身の政治信条を有権者に呼びかけなければならない大統領選挙の局面でも北南共同宣言の履行に対する言及を避けている。他のテーマに関心を払って見落としているのではない。意図的に言及しないのである。
相反する発言はしている。大統領候補たちの最初のテレビ討論(4日)で朴候補は、6.15以後に南側政府が推進した交流協力事業を、北の要求を一方的に聞くだけの「一方的支援」だったと断定し、対北強硬策の推進を正当化した。金大中、盧武鉉政権の時代に対し、「失った10年」とレッテルを貼った李明博政権のロジックを繰り返しているのである。
テレビ討論では、大統領のリーダーシップに対する候補の見解も示された。「いま必要なのは国民との疎通と国民に対する正直さである」「当選のために心にもない政策を口にしてはいけない」「不通、傲慢、独善の女王は要らない」―野党候補たちの発言は朴槿恵候補を念頭に置いたものだった。
一方、朴候補は「危機克服のリーダーシップ」が必要であると述べた。「大統領職をまっとうするうえで国政の80%が危機管理問題」だというのがその理由である。朴候補は、対北関係も「安保を土台として信頼を正常化すべきである」と主張し、軍事的抑止力の強化と米国との同盟関係強化に注力する意向も示した。
その一方、野党候補が「セヌリ党の執権5年間、南北関係が最悪の状況に陥った」「李明博政府は安保を強調したが天安艦爆沈、延坪島砲撃などで安保に穴があいた」と追及したところ、朴候補からまっとうな反論は出なかった。
抑止力を背景に対北政策を推進するという論理は、北と南を同族ではなく国と国の関係と見なす観点から生まれるもので、6.15共同宣言で確認された「わが民族同士」の理念にそぐわない論理である。
同族を「安保」の対象と見なし、外部勢力と結託して自分たちの要求を強要してもたらされる結果は対決しかない。それは武力衝突の危機を再びつくりだす「安保無能」以外のなにものでもない。
朴候補は平和と安全、北南関係改善に対する同胞の期待と志向に沿った政策公約を出せていない。「不通、傲慢、独善」の悪習は民族問題に対する態度にも現れている。
12月1日、北の祖国平和統一委員会書記局は、朴候補に対する公開質問状を発表した。選挙を目前に控えた時期に「いまからでも李明博一派の対決政策と訣別し、真にそれと差別化され、変化した『対北政策』を表明する意志はないのか」と問いかけたのは異例なことだが、当事者からの返答はない。
6.15の恩恵を受けて北を訪問した南の政治家が、「対北政策」に対して述べながらも、北南宣言の履行問題に一言も言及しないのは、すでに反6.15勢力のスポークスマンとしての役割をしはじめたことを物語っている。分断の既得権層に気づかいながら、彼らに媚を売る勢力が青瓦台に居座ることになれば、悪化しきった北南関係の改善はなされないだろう。
(金志永)