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〈ピョンヤン探訪②〉イルカ館、第一歩を切り開く若者たち

国内初、調教師たちの挑戦

【平壌発=周未來】今年7月、平壌にオープンした綾羅人民遊園地には、絶叫マシーンを楽しむ遊戯場以外にも人気スポットがある。国内初となるイルカ館だ。ショーは毎日11時、15時と2回にわたり行われている。公演ごとに全1,500席の客席はたちまち埋まり、階段まで観客がぎっしり座り込む盛況ぶりだ。10月上旬、ショーを支える調教師たちを訪ねた。

7カ月の海外研修

「それでは次に、『平壌2号』が調教師の頬にキスをしてみせます」。女性調教師が水面に顔を近づけると、イルカが愛らしく頬をタッチした。「『平壌2号』は雄なので、やはり女性の調教師がいいようですね」。ユーモラスな司会に、会場からはどっと笑いが起きる。

愛らしいイルカの曲芸

現在、飼育されているイルカは8頭。「綾羅」と「平壌」の名前で呼ばれている。「約2週間前からショーはバージョンアップされ、演目数が増えた」と話すのは、この日案内を務めてくれたチョン・スギョンさん(25)だ。

新たな演目の一つが、「水中交感」だ。調教師が水槽に入り、イルカたちと友だちのように泳いで見せる。

女性調教師が勢いよく水槽に飛び込むと同時に、中央の大画面に水中の様子が映し出された。水中では数頭のイルカたちと群れを作りながら、自由自在に浮上したり回転しながらイルカとの優雅なシンクロを披露していた。客席からは、その姿に感嘆の声が漏れた。

平壌の綾羅島にオープンしたイルカ館

イルカ館建設が決定されたのは、昨年7月。国内に前例はなく、調教師たちにとっても「未知の職業」だった。約7カ月間、海外で研修を受けたという。「国内に戻ってから、調教師たちは少しずつ、イルカたちとの距離を縮めていき、わずか1年弱で初ステージを迎えた。『水中交感』は厳しい訓練に励んできた調教師たちの不断の努力の賜物」(チョンさん)。

現役の大学生

公演終了後、チョンさんのはからいで調教師たちと会う機会が得られた。

出てきてくれたのは、最年長のチョ・セイルさん(28)とキム・ソンイさん(22)。先ほどまでステージに立ち、会場を沸かせていた司会者の男女だ。

調教師との息もピッタリ

ステージでのコミカルな口調からは想像できないほど、2人とも落ち着きがあり物腰の柔らかな好青年だ。会話を交わすと、いっそう知的な印象を受ける。

イルカ館に在籍している調教師は10人。みな成績優秀な金日成総合大学の現役学生だ。高い知能を持っているイルカは、賢いと認めた人間の言うことしか聞かないのだとか。

とはいえ、「最初は本当に大変だった」とキムさん。「まさか自分がイルカの調教師になるなんて思っていなかったから。机にかじりついてばかりいたから、泳ぎもうまくなかった」と笑う。「前例のない仕事なだけに、すべてが手探りで試行錯誤の毎日だった。すべての『前例』を僕らが作って行く責任もある」とチョさんが付け足す。

若き調教師たちに課せられた仕事は、山積みだ。調教訓練、専門知識の習得、水泳練習のみならず、ショーのプログラム作成と出演、イルカのエサやりに体調管理、緊急時に供え交代制で24時間勤務も。自宅に帰れるのは週に2、3回だという。

客席は連日超満員

「イルカによって性格も違えば、気分の浮き沈みも。資料だけでは解明できない部分もある。異常があった場合は、何時間もそばで観察しながら原因究明にあたっている」。イルカの調教に関する外国の資料は、一般公開されていないものも多いという。経験の浅い調教師たちにとっては、すべてを一から創造する毎日だ。調教に関する話し合いも頻繁に行っている。常に斬新で楽しいステージを提供するため、客席の反応をチェックしたり、自主研究も欠かさない。

「正直言って、仕事の負担は大きい」とチョさん。「それでも共に支え合える仲間がいる。何より、ショーに訪れた市民たちの喜ぶ顔が、本当に大きな力になっている。ここに来て嬉しそうに笑う市民たちの姿を見ると、疲れも忘れられる」とキムさんが続ける。

現在は、プログラム数を充実させることに力を注ぎながら、同時に前座のアシカショーの準備も行っている。要員の拡大と育成も視野に入れている。「第一歩」を最前線で切り開く、若き調教師たちにのしかかる責任は重い。

「それでも、僕らは奇跡を起こすつもりだ」――チョさんの言葉に、キムさんもうなずく。

記者と握手を交わすと、夕方の調教訓練へ足早に去って行った。

(朝鮮新報)

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